ドパミントランスポーターシンチグラフィー(ダットスキャン)の意義

ダットスキャンはパーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)の診断目的で現在は保険適応になっている検査です。PD,DLBとそれ以外を鑑別する目的とされてます。McKeithらが作成したDLBの診断基準では支持項目になっているようです。しかし最近わが国では、幻覚(幻視・幻聴)がある高齢者は全部DLBと診断しようという動きがあるようです。つまり「高齢者の幻覚=DLB」というのが、認知症専門医の共通認識のようです。
私は神経内科医ですが、パーキンソニズムが確認できる認知症を伴うパーキンソン病(PDD)という臨床像というのは理解できるのですが、パーキンソニズムを伴わないDLBという臨床像がよくわかりません。前医(認知症専門医)では幻覚があればDLBにされているからです。しかし実際に私の診断では薬剤性のせん妄が最も多いようです。比較的多いのは泌尿器系の過活動膀胱に使用される抗コリン剤です。抗生物質や抗インフルエンザ剤の内服は1週間以内ですが、一時的に幻覚が出る場合が多いようです。より深刻なのは、オピオイド系の鎮痛薬(トラマドール)単独、あるいは神経系鎮痛薬(プレガバリン、デュロキセチン)との併用で長期に内服したケースです。さらにパーキンソン病の治療薬の過剰投与でも、幻覚は容易に出現します。私が診ているPDの患者さんでも、レボドパ/ベンゼラシド150mg+セレギリン5mgにトリへキシフェニジル2mgを追加した70歳女性のケースや、レボドパ/カルビドパ300mg+ロピニロール8mg増量した73歳男性のケースは、ごく軽度ですが、幻覚を訴えました。PDの患者は元々ドパミン作動性薬剤によってドパミン受容体を刺激しているため、受容体の過敏性があり、幻覚が出やすいようです。他の神経内科医は「幻覚がでたらDLB化だ」と早計に誤診して、ドパミン作動薬の見直し減量などをまったく検討せずに、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネぺジルがほとんど)を安易に処方したがる傾向にあります。日本神経学会の作成しているガイドラインにも大いに問題があると思います。これを「薬剤カスケード」「ポリファーマシー」と言います。これまで、この処方パターンで病状がよくなったという声をほとんど聞いたことがない。高額な薬剤を過剰に処方しても患者の病状がよくならなければ、それは「医療費(薬剤)のムダ」に他ならないのです。
ダットスキャンという検査は、脳内の黒質から線条体に向かう神経経路(ドパミン神経)の変性・脱落の程度を評価する検査です。著しくドパミンの取り込みが欠乏している状況は、PDD/DLB,PSP,CBDでみられ、左右差のある軽度~中等度のドパミン取り込み欠乏はPDでみられます。たしかにPDD/DLB,PSP,CBDの鑑別診断には役に立たないので、価値がないのでは?という医者もいます。しかし私はこれらを「線条体ドパミン高度欠乏症候群」として一括した症候群として捉えていいのではないかと考えます。現状では脳内ドパミンニューロンの状況、病気の重症度を反映できる検査は他には存在しません。MIBG心筋シンチグラフィーは脳ではなく、あくまで心臓における自律神経の状態を診ているものです。自律神経不全はPD,PDD/DLBの症例によって差異が大きいと思います。
「線条体ドパミン高度欠乏症候群」では、ドパミンニューロンの変性・脱落が高度ですので、これらに共通しているのはドパミンやアセチルコリンに作動する薬剤がごく少量でも有害反応が出てしまうという事です。PSP、CBDに至っては効果も期待できないので、有害事象で病状が悪化するだけのケースが多いです。レボドパ少量でも眠気や幻覚が出たり、コリンエステラーゼ阻害薬少量でも、首曲がりや腰曲がりなどの姿勢異常が出てしまうのです。ドパミン高度欠乏(枯渇状態)を証明する検査として価値が大きいと考えています。
他には心因性パーキンソニズム、アルツハイマーの非典型型、ピック系(意味性認知症など)の除外診断をするのに必要だと考えています。明らかに臨床的にドパミン欠乏には見えないのに、「幻覚があるだけでDLBだ」と誤診されるケースが後を絶たないからです。「前医の診断を否定するための検査」として使うことが少なくないのです。幻覚の原因を臨床的に正確に評価できず、安易に「DLBだ」としてしまう臨床医があまりにも多すぎるからです。臨床医として、あまりにも短絡的でステレオタイプ的な思考回路としか言いようがないです。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2016-12-01 19:07 | 治療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line