アルツハイマー型認知症とメマンチンの再評価

「アルツハイマー型認知症」とはどういう臨床像なのでしょうか?私は認知症ばかり診るような「認知症専門医」ではありませんが、最近になってようやく純度の高い「アルツハイマー型認知症」の臨床像というものが理解できるようになりました。基本は除外診断に尽きるということです。
「アルツハイマー型認知症」では記憶・見当識・実行機能・注意障害などが3~4年単位で進行するため、ほとんどが仕事ができなくなります。日常生活動作も家族の援助がないと難しくなり、援助が得られない環境にいるケースでは早々にグループホームなどの世話になるしかない事になります。
「行動心理症状も精神症状も動作歩行障害もない、一見普通の人にしか見えないけど、日常生活動作が自立困難な認知症」それこそが典型的な「アルツハイマー型認知症」であり、発症年齢は55~75歳あるいは60~70歳が大半だと思います。そもそも発症年齢を同定するのはほぼ困難ですが、周囲が異変に気が付いた年齢というべきでしょう。そのため感度に大きな誤差が出ます。70歳を超えると純度が減少します。いわゆるレビー病理やピック病理が混在することによって、パーキンソン、グレイン、脳血管性などの要素が混在してくるので、アルツハイマーの純度は減少しておそらく50%くらいになると思います。75歳を超えると、グレイン(AGD)やPART(SD-NFT)のようなアミロイド無関係のタウオパチーの比率が増えてくるので、アルツハイマーそのものが減少してきます。たとえアルツハイマー病理が死後に確認されても、実際は本来のアルツハイマーとは大きくかけ離れた臨床像の症例ばかりになってしまいます。80歳以上ではやく半数を占めるのが、グレイン(AGD)と言われています。これはFTLDに似た臨床像で行動心理症状が前面に出ます。その一方でほとんどは日常生活動作は自立しています。
成書によると、病理的に「アルツハイマー」でも、臨床的には視空間失認や失行が強い、大脳皮質基底核変性症候群(CBS)をきたすタイプや、幻覚・妄想などのBPSDが強く出現するタイプ、前頭葉に病変が強く脱抑制が目立つタイプが存在するようで、私の外来においても非典型例がいくらか存在します。その多くは50~70歳と比較的若年者ですが、やはりこのような非典型タイプにおいては、コリンエステラーゼ阻害薬+メマンチンの標準的薬物処方は通用しないようで、たびたび奇異反応や副作用を起こすのではないかと思われます。
脱抑制、精神症状のない典型タイプでは、発症後7~8年経過して、簡易テストがほとんどできなくなった、FAST6レベルでも、メマンチンは10mgで有効でした。ガランタミンのみで2年継続してきましたが、病状が進行してアパシーで不活発になっていたケースではこの薬のおかげで活気を取り戻せたようです。
認知症を数多く診ている医者の中で、コリンエステラーゼ阻害薬ばかりを評価して、このメマンチンをまったく評価していない方々がいるようです。確かに高齢者に使うと軒並み眠ってしまったり、せん妄になったりするケースも多いので、「頭が悪くなる薬だ」と決めつけている医者も多いようですが、私はそうは思いません。たぶん多くの認知症専門を自称する医者は、コリンエステラーゼ阻害薬・ファーストの価値観が抜け切れていないのではないかと思います。以前から言っているように、この薬は単独で使用してこそ効果を発揮する薬剤だと思っています。コリンエステラーゼ阻害薬のフルドース(ドネぺジル10mg、リバスチグミン18mg、ガランタミン24mg)と併用するように指導している指南がこの薬の価値を貶めているのです。
純粋型のアルツハイマーの中等症~重症にとっては大変貴重な薬剤だと考えます。またコリンエステラーゼ阻害薬の副作用の多さ、リスクの高さを考えると、使いにくい症例が非常に多いのが現実です。コリンエステラーゼ阻害薬が使えない、発症して5年以上経過した症例にはメマンチンが有用ではないかと思います。


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by shinyokohama-fc | 2016-11-22 18:56 | 医療
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