65歳。ガランタミン4+4でも心停止寸前!

これから紹介する症例は、当院へ受診する前のイベントですが、正直言って衝撃的でした。コリンエステラーゼ阻害薬においては他の薬剤よりもアセチルコリン賦活作用が1/8~1/10とも言われている、ガランタミン。しかも4+4mgでの少量での使用。しかも65歳の症例です。
約1年前からカギを無くすなどのエピソードがみられ、今年から病院のメンタル科に通院。意図は不明だが、通常量よりも少ない、4+4mgで処方継続されていました。独居だったので、日常の状況が不明でしたが、1~2か月前から長女宅で同居するようになってから、食思不振、倦怠感がみられ、嘔吐~意識消失を3回繰り返したとのことでした。3回目の救急搬送で、薬剤性(ガランタミンによる)QT延長症候群との診断名でした。忙しいさなかに救急担当医によってメンタル科宛てに書かれた情報提供書の要約を以下に示します。
●月●日●時ごろ、外出先で椅子に座っていたところ、突然嘔吐して意識消失(5分前後)し、救急要請。
救急隊到着時は、意識レベル1-10、脈拍40/分、血圧測定困難、SpO289%、呼吸数18/分、体温36.0℃
病院到着時は、意識レベル1-10、心拍数47/分、血圧 101/61(測定可能)
心電図にてQTc 0.567!! 血液検査で、低カリウム血症(2.8mEq/l)を認めました。
2回目の搬送時に循環器科で精密検査を実施、心臓カテーテル検査・心臓エコー・ホルター心電図を実施しているが、器質的な心臓疾患は確認できませんでした。
ガランタミンによるTorsade de pointes(Tdp)疑いとの事でした。意識消失時にECGが記録できていれば、おそらく
Tdpに特徴的な波形が確認できたかもしれませんが、実際は入院中にイベントが起こらないと難しいでしょう。
この症例においては、このイベント後にガランタミンは中止されて、2週間後に当院を初診されましたので、ECGを実施したところ、QTcは0.471に戻っていました。次回再検査すれば0.45以下になってるかもしれません。
ガランタミンの場合は、ドネぺジルよりも薬剤半減期がかなり短いのが、不幸中の幸いになります。リバスチグミン場合は貼付剤なので、剥がせば薬剤の影響はなくなると言われています。
高齢者でTdpを確認した場合は、房室ブロック、洞不全症候群、高度徐脈、低カリウム血症、QT延長をきたす薬剤などの有無を確認する事が必要とされています。
心筋細胞のイオンチャンネルに関連した遺伝子変異が、QT延長症候群の60~70%に同定されます。カリウムチャネル遺伝子変異の場合は、チャネル機能低下により再分極に時間がかかりすぎることが原因と言われています。
私個人の経験で言うと、ChEI内服中の外来受診時のECGにおいて、房室ブロック、QTcの延長、高度徐脈、洞不全などを確認した事がこの2年で10件ほどあり、慌ててChEIを中止しました。リバスチグミン低用量でも起こった事例がありましたが、多くは通常用量だったと思います。本来なら血液検査で電解質測定も実施すべきだと思います。
このような心室性不整脈というリスクを冒してまで、ChEIを処方すべき症例なのか?ChEIを処方することによって患者側にデメリットはないのか?メリットは得られるのか?処方する前に塾考する必要があります。
ちなみにしつこいようですが、抗精神病薬との併用はリスクを何倍も引き上げるということをお忘れなく!



新横浜フォレストクリニック
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by shinyokohama-fc | 2016-11-21 18:42 | 治療
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