コリンエステラーゼ阻害薬は安全に使用できるのか?

この2年間の外来における臨床事例において、あまりにも多くのコリンエステラーゼ阻害薬による有害事象を経験しました。この薬の使い方は本当に難しいと痛感させられました。私が出した結論は以下のとおりです。
1) 不整脈(QT延長症候群・高度徐脈)
ともに心停止につながる危険な不整脈である。80歳以上の超高齢者、抗精神病薬との併用は当然リスクが高まる
使用前に心電図を必ずとり、QTc 0.47以上の事例では使用を控える。
家庭血圧で毎日脈拍を記録して、40/分以下の高度徐脈にならないか確認する(徐脈化があれば直ちに中止)。初診から2週間後に再診が望ましい。
2) 姿勢異常(首下がり・ピサ徴候(体幹ジストニア)・腰折れ)・動作歩行障害の悪化
パーキンソニズムを少しでも確認できる症例、罹病期間長期・重症・80歳以上の超高齢者など線条体ドパミン高度欠乏が疑われる事例においてよくみられる。
パーキンソニズムがヤール2度以上の症例、ドパミントランスポーターシンチグラフィ(ダットスキャン)において線条体のドパミン取り込みが低下している症例(パーキンソン型認知症、大脳皮質基底核変性症)においては、特にアセチルコリン賦活作用の強力なドネぺジルとリバスチグミンを使用する場合はごく少量で
3) 易怒・興奮・常同行動悪化
NPIスコアにおいて、興奮性・脱抑制・易怒性・異常行動が確認できる症例(つまり前頭側頭型タイプ、グレインを含む)へのドネぺジルとリバスチグミンを使用する場合はごく少量で
4) 食欲低下・体重減少・嘔吐
超高齢者で特に食欲低下・低体重・フレイルの症例でのガランタミン、ドネぺジルの使用を控える。もし使用する場合は、週1回の体重測定を行う。
5) 頻尿・尿失禁
使用前後で変化がないか、十分に問診にて確認する
私の結論としては
1)ドパミン神経の変性・脱落が疑われる症例には、ガランタミンを1stで使用。
2)ドパミン神経の変性・脱落が疑われない症例には、リバスチグミンを1stで使用。
3)脱抑制の強い症例にはガランタミンを1stで使用。
4)80歳以上にはかなり慎重にモニタリングしながら使用。ガランタミン>リバスチグミン
5)70歳以下で、BPSDも動作歩行障害もみられない純性アルツハイマーにはリバスチグミン1st、ドネぺジル2nd
リバスチグミンやドネぺジルは前頭葉を賦活するので、歩行障害系に使えとか、パーキンソン型認知症に使えという意見があるようですが、ドパミン系障害がある症例においては、強いアセチルコリン賦活作用が、相対的ドパミン欠乏→姿勢異常・動作歩行の悪化を招くことが非常に多いことがわかったので、個人的には推奨できません。
パーキンソン治療薬・ドパミン作動薬であるレボドパ、ドパミンアゴニスト、セレギリンなどが過剰投与されていて幻覚・妄想が誘発されている場合は、例外的だと思いますが、そもそも幻覚・妄想が出るほどドパミン作動薬が過剰投与されている方が問題だろうと思うので、安易にアセチルコリンエステラーゼ阻害薬を追加する前に、まずドパミン作動薬(特にドパミンアゴニスト)を可能な限り減薬するべきだと思います。ドパミン作動薬の過剰投与によってせん妄状態に至っているのを「認知症だ!ChEIだ!」と短絡的・即物的に処方されている事例があまりにも多いようですが、ドパミン作動薬を整理して、せん妄を解いた後にスケールを行うと26~30点だったという事例ばかりでした。いかに専門医を名乗るDrが薬物作用というものに無理解かというのがよくわかります。
コリンエステラーゼ阻害薬は、50~70歳で発症する純粋型アルツハイマーにおいては、通常規定された用量どおりで使用することが安全に可能だと思いますが、中には例外的な症例もあるので、最低でも心電図測定・血圧・脈拍測定などのモニタリングくらいはするべきです。無駄な救急医療費は使わせないように。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2016-11-21 17:10 | 治療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line