小脳失調が主体のPSP-C

進行性核上性麻痺(PSP)のサブタイプで小脳失調が強く、筋トーヌスが低下(筋弛緩)している、PSP-Cというタイプがあります。当院でもこの2年で10名の臨床的にPSP-Cと推定される症例を診察しました。今月に入ってからも2名PSP-Cの症例を診ました。今年5月に神戸で行われた日本神経学会でPSPに関するシンポジウムを聴講しましたが、欧米ではPSP-Cという概念はなく、多くがMSAと診断されているのではないか?という意見がありました。PSP-Cについて最初に論文発表したのは、新潟大学神経内科です。PSPの原因であるリン酸化タウタンパクは大脳・脳幹だけではなく、小脳にも蓄積します。小脳にタウ蛋白が蓄積すると、やはり小脳失調が主症状となり、本来のPSPの姿勢反射障害・前頭葉性失調(フロンタルアタキシア)にプラスして小脳性の平衡運動失調も加わるため、より転倒性が増すことになります。
小脳症状の主なものは以下のとおりです。
1)よろよろする歩行(歩行失調) 2)スムーズに話せない(断綴性言語) 3)ペンをうまくつかめない(測定障害) 4)目がスムーズに動かない(滑動性眼球運動障害)
1)~4)が揃うのは一般的に脊髄小脳変性症(SCD)かオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA/MSA-C)などの慢性進行性の小脳変性疾患ですが、PSP-Cの症状は一般的に1)のみの事がほとんどのようです。歩くときに左右に体幹がよろける酩酊歩行で、左右の足の開きはフロンタルアタキシアのみのPSP-RSに比べてもかなり大きくなります。方向転換時のよろけが最も大きく、継ぎ足歩行や片足立ちが困難になります。筋緊張(トーヌス)はむしろ正常より低下しており、PSPで通常筋強剛になる頸部や体幹ですら筋トーヌスは低下傾向です。当院に受診したPSP-Cと思われる症例を検証すると、前医で処方された少量のレボドパでも病状は悪化したといいます。レボドパはむしろドーパミン補充により筋緊張を低下させるので、PSP-Cの筋緊張低下をさらに悪化させる事になります。逆にコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)はアセチルコリンを賦活させて筋緊張を亢進させるので、筋トーヌスを正常化させ、この病態には合う可能性があります。PSP-RSやPSP-Pに対しては頸部~体幹および四肢の筋緊張が亢進しており、症例によっては頸部がガチガチに固まって前後にほとんど動かないケースも少なくないですので、ChEIはむしろ用量に比例して病状を悪化させ、場合によっては嚥下障害を悪化させる可能性があります。ただしChEIは筋緊張を亢進させるだけで、小脳性運動失調を改善させるわけではありません。MSAやSCDにはTRH治療が保険適応となっていますが、実際にはそれほど効果があるわけではないようです。
PSP-Cは古典型PSPのRSに比べて進行スピードはかなり遅いですが、それでも発症して6~7年経過すると失調が強くなり、ごくわずかな距離の歩行移動も困難になります。失調が強いケースだと、体幹が左右に大きく動揺します。
PSP-RSやPSP-P、PAGFなどではこういう所見はみられないため、PSPサブタイプの中でもかなり異質なタイプだといえるでしょう。


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by shinyokohama-fc | 2016-07-12 16:54 | 医療
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