開眼失行と眼瞼痙攣はジストニアの一種

先日、あるCBS-CBD(大脳皮質基底核変性症)と思われる症例の動画をみせてもらいました。開眼しない時間が多いとのことでしたが、なんと開眼しない状態で食事を普通に嚥下していました。前医では意識障害(せん妄)ではないかと言われていたようですが、意識障害下で食事を普通に嚥下するのは不可能です。意識障害の改善に使用されているシチコリン注射を実施されたが全く改善しなかったという事でした。これは眼の周辺筋のジストニアの一種で、開眼失行または眼瞼痙攣ではないかと思われます。この病態は全くと言っていいほど周知されていない症状のようですが、大脳基底核障害によるジストニアの一種です。特にPSPSやCBSではかなり高率にみられる症状です。進行性核上性麻痺機能尺度日本語版(PSPRS-J)には「眼瞼機能不全」という項目があり、そのスコアは1)瞬目の減少 2)開瞼閉瞼困難または眼瞼攣縮 3)瞼が開けつらく、眼瞼攣縮のため部分的視覚障害 4)瞼が意思に反して閉じるために目が見えない状態 と4段階で評価となっています。開眼失行と眼瞼攣縮の定義を以下に列記します。
開眼失行(apraxia of lid opening) ; 閉眼後の随意的な開眼において、上眼瞼挙筋の収縮開始遅延のため、開眼しようとしているが、なかなか開眼できない状態。開眼しようと眉を吊り上げたり、額にしわ寄せたりする事がある
眼瞼攣縮(blepharospasm) ; 眼輪筋など閉瞼に関与する筋の随意運動困難により自由な開瞼閉瞼ができない状態。眼瞼に力が入りすぎてしかめっ面になる。
当院で診療した50例の進行性核上性麻痺・症候群(PSPS)のうち、5例に明らかな開眼失行・眼瞼痙攣を確認しました。CBSも一部PSPSとオーパーラップする同じ疾患群ですので、2~3例に同様の症状を確認した記憶があります。
パーキンソン病においても発症後20年前後の経過の長い症例においてはレボドパのオフ時間に同様の症状が見られます。この症候は大脳基底核が起源だと考えられているようです。
意識レベルの評価として有名なグラスゴーコーマスケール(GCS)では意識レベルの評価として開眼機能(eye opening)というのがあり、E4)自発的に普通の呼びかけで開眼 E3)強く呼びかけると開眼 E2)痛み刺激で開眼 E1)痛み刺激でも開眼しないというスケールがあるくらいなので、医療者には開眼しない=意識障害だと誤認されやすい傾向があります。実際は眼瞼筋に不自然に力が入りすぎて開眼できないだけなので、このような状態の方は意識は清明に保たれているため、命令動作には従えるはずです。周囲の人々は「この人は意識がない」と勝手に認識して、油断して本人に都合の悪いことを平気で言ってしまう場合がありますので、かなり注意が必要です。
このような局所ジストニアの治療としてはA型ボツリヌス毒素が適応になります。神経筋接合部の神経終末からアセチルコリンの放出を阻害し、3~4か月の長期にわたる筋弛緩効果がありますが、かなり医療費としてはかなり高額になりますので、あまり普及していないようです。


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by shinyokohama-fc | 2016-06-20 17:14 | 医療
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