進行ステージPSPS、ChEI変更により奇跡がおきた

今回紹介する症例は84歳女性で、9~10年前に転倒にて発症したPSPS(進行性核上性麻痺症候群)の方です。PSPSとしては進行が緩徐ですので、PSP-RSでないことは間違いないようです。当院で2年間に受診したPSPSの50例で、RSと思われるタイプは14例(28%)でした。PSP-RSは1~2年の急速な経過を辿りますが、他のサブタイプ症例は7~10年の経過の症例も多いようです。この症例の場合は7~8年前から幻覚・妄想などの精神症状があり、4年前までは歩行器で歩行していたが、3年前から起立歩行不可能となったそうです。情緒障害があり、感情失禁、スイッチ易怒、介護拒否などの脱抑制的行動心理症状が目立ち始め、1~2年前から次第に話せなくなったそうです。他医でのMRI検査では大脳・中脳~脳幹・小脳ともびまん性に顕著な萎縮がみられました。診察では頸部・体幹の筋強剛が強く
ガチガチに固まっていて、前後左右に他動的にも全く動かない状態でした。言葉は全く発する事はできず、目はびっくり眼で上下左右に運動制限が強く、顔面の表情筋も全く動かない状態でした。四肢も鉛管様の固縮で他動的にも関節運動させるのに苦労する状態で、自発的には上肢の屈曲・進展もできない状態でした。PSPSとしては臨床的に極期であり、この状況ではとても治療が奏功するとは想像できませんでした。
前医ではドネぺジルの後、リバスチグミン4.5mgが処方されていて、フェルラ酸サプリも服用していたようですが、まったく症状は改善することなく悪化する一途でした。PSPSとして極限まで悪化した状態であり、高齢でもあり、もはやこれまでかという印象でした。FTDタイプで脱抑制が目立つという理由で、リバスチグミンからガランタミン4mg+4mgへの変更をしました。理由はリバスチグミン4.5mgでもこの症例にとってはアセチルコリン賦活作用が強すぎると感じたのと、ノルアドレナリンやドパミンなど多方面の神経伝達物質の賦活作用を期待したからです。1か月後に再診の時には驚かされました。まったく微動だにしなかった頸部が左右・前後に自力で可動できるようになっていて、一言も話せなかったのが、語彙はかなり少ないものの話せるようになっていました。前回みられた右方向への体幹傾斜(おそらくジストニア)も治っており、座位が保てなかったのが、保てるようになってました。全く自分で動かせなかった両上肢も屈曲・伸展ができるようになっていました。今まで見たこともないような奇跡に遭遇したと言っても過言ではないと思います。コリンエステラーゼ阻害薬な(ChEI)は3剤どれを使ってもそう大差はあるまいというのが、多くの医者の意見だと思いますが、この症例で起こった事は、ガランタミンという薬剤が神経難病の極期にも非常に著明な効果を示すという事実を証明しました。逆に言うと、それまで使っていたChEIの2剤が、PSPSの病状をアセチルコリンの過剰賦活作用によって著しく悪化させていたのではないかという疑念も残ります。このChEIによってPSPSの病状が大きく左右されるという事実は今年3月の研究会で発表し、現在論文としても作成中です。今年の秋にはそれが掲載された研究会雑誌が出版される予定です。


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by shinyokohama-fc | 2016-06-11 17:20 | 治療
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