パーキンソン病精神障害に対する新薬承認(FDA)

パーキンソン病精神障害(幻覚、妄想)というのは、米国の統計ではパーキンソン病(PD)経過中の50%にみられるそうです。私が外来で診ている範囲では、パーキンソン病の10~20%に見られるという印象です。幻覚と妄想が現れる理由として最も多いのは、服用しているパーキンソン治療薬が原因のケースです。薬剤の感受性で個人差がありますが、ドパミンアゴニスト、セレギリンで誘発されやすいようです。感受性が過敏な方は短期間の内服でも幻覚などが誘発されますが、多くは長い年月にわたる内服によって誘発されるケースです。治療ガイドラインでは幻覚が出れば幻覚を誘発しやすい薬剤から順次減量・中止していくように指導されていますが、治療薬の減量・中止は長年PDを患っている方々にとっては、動作歩行レベルが悪化するデメリットがあり、あまり歓迎されるものではないようです。脱水症や感染症などの病態の影響で誘発される事もありますが、これに関しては補液など適切な対処をすれば、一過性に終わる事がほとんどです。薬剤や感染症などが関与せず、それほど多くない用量の薬剤用量(レボドパ150~200mg/日)でも顕著な幻覚、妄想が現れているケースがあります。しかも身体症状が発病してわずか1~2年という短期間で出現するようです。PDのものが原因、あるいは認知症に伴う行動心理症状とも言われています。通常PDは中脳黒質・線条体に限局した局剤的な病理変化と言われていますが、中脳黒質・線条体(基底核)~辺縁系、~皮質系の連関サーキットというのが大脳生理学者によって報告されていて、その強弱によって情動症状や精神症状が起こると推察されます。中にはそれ以外にも大脳皮質や脳幹下位に広範囲にレビー小体病理変化が起こる、いわゆる「びまん性レビー小体病」の病態になるケースもあります。臨床的にはパーキンソン病認知症(PDD)と呼ばれていて通常のパーキンソン病に比べて非常に薬物コントロールに難渋するケースが多いようです。
このたび2016年4月29日、米国食品医薬品局(FDA)はパーキンソン病に伴う精神障害である、幻覚・妄想に対する初めての治療薬であるNuplazid(pimavanserin)を承認したとの事です。選択的セロトニン逆作動薬(SSIA)と呼ばれるまったく新しいタイプの薬剤で、選択的に5-HT2A受容体を標的とする一方で、ドパミン受容体など他の神経伝達物質の受容体の活性を抑制しないそうです。ドパミン作動に関与しないので、従来の抗精神薬のように運動機能を障害することなく、幻覚・妄想を抑制することができるそうです。FDAはこの薬を「画期的治療薬」に指定しています。残念ながらこのニュースは神経内科の学会である、神経学会やパーキンソン病学会(MDSJ)などでは一切触れられていませんでした。
現在パーキンソン病精神障害に対しては、「統合失調症」にしか保険適用が認められていない、抗精神薬がやむをえず少量投与されています。具体的にはクエチアピン(MART)、リスぺリドン(SDA)、オランザピン(MART)、アリピプラゾール(DSS)、ベロスピロンなどのドパミン受容体に作用する非定型抗精神薬が使用されています。しかしパーキンソン治療薬と非定型抗精神薬が併用されている症例で前医によって投薬コントロールが成功している症例をほとんど見たことがないです。これらの薬剤の選択や用量設定が極めて難しいという側面も否定できませんが、多かれ少なかれ複数の神経系薬剤がドパミン受容体に作用すれば、コントロール不能なりうるのは自明の理です。動けなくなるか精神錯乱になるかというのを繰り返す状態に陥ります。この結果、神経伝達物質や受容体が混迷状態に陥る事が少なくないようです。認知症においても非定型抗精神薬を長期使用する危険性が指摘されているため、これらの短期間にとどめるようにと言われています。しかし他に適切な薬剤が存在しなかったのでリスクを冒して「統合失調症」の治療薬を使わざるを得ないのが現状です。
今回の新しい治療薬はドパミン受容体に作用しないため、従来の抗精神薬とは違い、ドパミン阻害によるデメリットを気にしなくていいそうです。日本の急速な高齢化に伴い、70歳以上の高齢発症のPDにおいて、PDDの経過をとるパーキンソン病精神障害の症例が今後増加してくる事が予想されます。この薬が日本でも1日も早く使用できるように期待したいです。


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by shinyokohama-fc | 2016-06-09 19:02 | 治療
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