PSP治療推奨薬?(2)高用量レボドパと3剤療法

進行性核上性麻痺症候群(PSPS)の臨床診断は特徴さえつかんでいれば、少なくとも神経内科専門医には容易なもので、私が外来で診るPSPSの症例もほとんど前医でそう診断されているものが多いようです。Brain2007で発表された、GolbeによるPSP rating scale(臨床評価尺度)でスコアをつければ良いと思いますし、私自身が作成し、先日の第2回認知症治療研究会で発表した20点満点のスコアで評価してもらえば、画像診断は不要です。
ただ私にとって理解し難いのは、PSPSに対する多くの神経内科専門医の薬剤処方です。私からみて一番問題だと感じるのは、無鉄砲なレボドパの増量治療です。PDやDLBと違って、PSPSはレボドパが効果がないというのが診断の指標になります。パーキンソン治療薬が何も入っていない状態で、ドパストン注射薬25~50mgを点滴して反応して動作歩行が改善すればPDかDLB、改善しなければそれ以外で、PSPS、CBS、MSAの可能性が高まります。
レボドパは通常末梢から血液脳関門(BBB)を通過してチロシンによりドパミン作動性神経内でドパミンに変換します。パーキンソン病治療のゴールドスタンダードと言われているように、パーキンソン病治療というのはレボドパなしには成立しないと言っても過言ではないと思います。しかし一方でPSPSにおいてはレボドパ・カルビドパを600~800mg/日まで増量してもほとんど効果を発揮しないです。レボドパを増量して歩行が改善したという話を聞いたとがないです。効果のない薬を大量に処方するという事は患者側の不信感と副作用を生むだけで何のメリットもないわけです。レボドパは比較的副作用の少ない薬とはいえ、やはり不必要に高用量を長期に継続すれば、幻覚やせん妄・嗜眠などを誘発しますので要注意です。PSPSについては病型にもよりますが、私の経験ではレボドパよりもアマンタジンの方が効果を発揮する可能性が高いと考えます。ドパミン作動性神経に直接作用してドパミン放出を促進します。患者の臨床的特徴によってどれくらいの用量で効果を発揮するかは人それぞれですが、DLBなどで意識レベルを改善させる効果もあるため、この薬が脳幹に作用しているのは間違いないでしょう。私が使うのは50~150mg程度が多いのですが、レボドパが全く効果のないPSPSでも効果を発揮するのは間違いないようです。
ドパミン・アセチルコリン・ノルアドレナリン治療というのもレボドパ・ChEI・ドロキシドパを3剤併用するそうですが、PSPにおいてはレボドパを入れても脳内ドパミンは全く賦活される事はなく、3剤ではなくレボドパなしの2剤でも十分ではないかと私は考えます。3剤療法の論文によるとChEIはガランタミンを主に使用しているらしく、ガランタミンはドパミンやノルアドレナリンを賦活する作用があるので推奨できます。ただしこの治療法を試したPSP患者の体験談によると、初期に消化器症状が強く出るようでとても耐えられなかったという方々が数例ありました。個人的意見としては、ガランタミン単剤だけでも十分にドパミン・アセチルコリン・ノルアドレナリンをバランスよく賦活できるではないかと考えています。


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by shinyokohama-fc | 2016-04-28 19:03 | 治療
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