いったいどれだけの医療者が薬物を正しく理解しているのだろうか?

唐突ですが、薬物とは何か?病気の治療・予防・診断に用いられるものであり、人命を守り、健康に過ごすために欠かせないものと定義されています。
薬理学とは何か?薬がどのような仕組みで効果を現わすかを理解する学問であり、①薬を適正に使用する②薬の副作用・有害作用を最小限に抑える③新しい薬物を開発する ことが目的とされています。
はたして現実はどうでしょうか?私は25年もの長きにわたり臨床現場に身をおいていていて痛感するのは、自分も含めていったいどれだけのDrと薬剤師が薬物と薬理学を正しく理解しているのだろうか?という事です。
16世紀のバラケルスという著名なDrは「すべての物質(薬物)は毒であり、毒でないものは存在しない」と語ったのは有名です。つまり薬物には主作用(治療の目的に適った作用)と副作用(主作用以外の作用)があり、副作用が人体にきわめて有害性をもたらす事も少なくないわけです。例えば心臓の副作用は致死的となりますので要注意です。
私が専門とする神経内科や精神科でよく使用する神経系の薬剤は細胞膜受容体のイオンチャンネル内蔵型受容体に作用する受容体アゴニスト(刺激薬)アンタゴ二スト(拮抗薬)のいずれかが大半を占めます。本来は人体の恒常性を維持している神経伝達物質と受容体に対して外部からアプローチするのでそれなりのリスクを伴うわけです。高齢者・虚弱者であればあるほどそのリスクは高まります。例えば認知症でよく頻用される、コリンエステラーゼ阻害薬を80歳を超えた体重50kg以下の人に投与するというのはリスクです。それなのに患者側の多くはそのリスクについて医療者からほとんど説明されていないようです。日本老年医学会が昨年発表した多数の要注意薬剤リストにも一切含まれていません。私はここに強い非常に不信感を感じました。どう考えてもおかしいのではないか?
私自身が約1年前から診ている60代後半の男性にコリンエステラーゼ阻害薬を処方しました。増量規定に従って増量して1~2か月経ってから、家庭血圧の記録で40~50回/分の徐脈傾向がみられ、心電図検査をしてみると心室性不整脈が多発していたので、よく知る循環器科医に相談した結果、コリンエステラーゼ阻害薬を中止したほうが良いという結論に至りました。約5年前に前医でコリンエステラーゼ阻害薬を処方されていた60歳の男性が30~40回/分の高度徐脈になり、薬剤中止後も2か月もの間、徐脈は続いたわけですが、幸い意識消失や心停止はなく、ペースメイカーを入れるような事態にも至りませんでした。
最近ようやく講演会などで、コリンエステラーゼ阻害薬を処方している患者に対して、心電図モニタリングの重要性が提言されるようになりました。最低でも家庭や施設において血圧・脈拍の測定はされるべきで、外来担当医はそれを確認すべきでしょう。それは高齢者において意識消失や高度徐脈、心停止などで救急搬送された事例が相次いようです。
薬物の有害事象のリスクを患者側に説明し、かつ監視するという事は医療者の使命だと思います。本来は人命を守り、健康を維持する目的で処方されるべき薬物であるはずなのに、現実は薬物によって人体の恒常性が破壊されて、健康を脅かされ、人命の危険に晒されている事象が多すぎます。いったいどういう事なのでしょうか?やはり薬物を提供する側のDrと薬剤師に大きな責任があるのではないかと私は思います。



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by shinyokohama-fc | 2016-04-03 15:37 | 治療
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