抗精神薬の副作用を知らずに処方する医者

抗精神薬という薬は本来、統合失調症の精神興奮症状を抑制するために使用される薬剤です。実際に統合失調症に対して使用される薬剤としてはオランザピン、リスぺリドンが比較的多いようです。その一方で、昨今では認知症に伴う他害的な言動行動に代表される、行動心理症状にも頻用される傾向があります。認知症とされる症例のうち、約3/4が75歳以上の代謝能力の著しく低下した後期高齢者という事を考慮すると、こういう薬を使うにあたって安全性が特に問題とされます。特にコリンエステラーゼ阻害薬と抗精神薬の併用は心電図において、QT時間の延長や徐脈化などの他に冠動脈攣縮を誘発すると言われており、心臓不整脈、心臓突然死のリスクが高まると言われています。
そのため、高齢者に抗精神薬を使用する場合は、①事前に心電図検査を実施してQT時間などリスクファクターを確認する、②可能な限りコリンエステラーゼ阻害薬や甘草含有漢方薬との併用を避ける、③重篤な副作用のリスクの少ないチアプリドを使用する ④有害事象のリスクについて十分な説明と同意を得る、事が必要です。
私自身の経験では1年前まではいくつかの抗精神薬を使用していましたが、チアプリド以外の薬剤に関しては少量投与(年齢や体重を考慮した用量)では期待していたほど効果が得られず、一方で8~9割以上の症例に長期連用(1か月以上)で何らかの副作用が出現しました。総合的に評価してチアプリド以外の薬剤はリスクを冒して使用するメリットがなく、むしろ有害事象デメリットが多かった(結果的に脱落・使用中止がほとんど)という印象でした。後期高齢者においては抗精神薬に対する忍容性は残念ながら極めて乏しいと言わざるをえないという結論でした。
先日の外来で83歳の痩せさらばえた女性で認知症と診断されて、上半身の不随意運動で受診した方がいました。薬の手帳によると、前医にてガランタミン12mg×2!!が処方された上に、2年前からリスぺリドン2mg/日、1年前からアリピプラゾール3mg/日が処方されていました。同伴者のご家族は抗精神薬を使用してから、ひどい不随意運動(アテトーゼタイプのジスキネジア)が出現している事にすぐに気がついて、中止するように処方した医者に伝えたそうです。しかしこの医者は抗精神薬による副作用であることを本当に知らないのか?知らないふりをしているのかわかりませんが、事もあろうに「パーキンソン病だ」とか訳のわからない事を言い始めたそうです。年齢体重を考慮せずにChEIを不相応に過量処方して興奮させておいて、それを抑えるために不必要な抗精神薬を処方して、このようなひどい薬剤性錐体外路症状(EPS)であるジスキネジアを誘発させているのですから呆れます。高齢者に対しては抗精神薬で誘発されたジスキネジア、ジストニアは遅発性かつ遷延性であり、原因薬剤を中止しても改善しにくいケースが多いようです。非定型と呼ばれる抗精神薬である、ベロスピロン、リスぺリドン、アリピプラゾールでもかなりの頻度でEPSとしての不随意運動を誘発するようです。不随意運動は致死的な副作用ではありませんが、患者に長く苦痛を与える有害事象です。1年前は己の処方したクロルプロマジンで発熱しているのが明白なのに「原因がわからない」とか言っている医者がいるという話を患者家族から聞きました。高齢者に抗精神薬を処方する場合は、必ず事前に起こりうる有害事象をすべて説明すべきだと思います。抗精神薬の副作用をまったく知らない医者が処方して、EPSが出現したら神経内科へ送るのでしょうか?このような悲惨な薬害の症例を診るたびに、そんな無責任な医者は劇薬である抗精神薬を処方する資格などないのではないかと強い憤りを感じます。



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by shinyokohama-fc | 2016-03-22 14:53 | 治療
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