パーキンソン型認知症には少量アマンタジンが著効

当ブログでは以前から「レビー小体型認知症(DLB)」という呼称を用いてきましたが、軽度~中等度のパーキンソン症状が明確に存在する症例以外はともかく、パーキンソン症状が全く存在せず、むしろ動作が通常よりも速い症例でも幻視、認知の変動があればDLBだと前医で診断される症例を数多く診ました。それらの多くがピック系の意味性認知症、行動障害型FTDとして典型的な症例が多かったという印象です。私はこの2年でさまざまな症例を診るにつれてDLBという病名を現行の診断基準で診断するのは不可能ではないかとすら感じるようになりました。そもそも「レビー小体」というのは病理診断であるために、実際の症状だけで、レビー(シヌクレイン)が溜まっているのか、タウが溜まっているのかなど誰もわからないので当然といえば当然なのですが。そもそも幻視という症状1つとっても、前頭葉、側頭葉が起源のものから、中脳黒質~脳幹、あるいは後頭葉が起源のものもあると言われており多彩です。統合失調症の症状として幻視・幻聴がみられるように、意味性認知症などのピック系の疾患群、CBS/PSPSなどのピックコンプレックスでも幻視・幻聴がみられる症例は少なくないという印象です。
つまり「木を見て森を見ず」という診療が誤解を生んでいるのではないか?神経疾患の臨床診断というのは全体像を見てするべきであり、「幻視」「パーキンソン症状」とか断片的な症状だけで診断すべきではないと考えています。
今後はパーキンソン病の主要症候が存在する症例を「パーキンソン型認知症」と呼ぶようにしたいと思います。このタイプの認知症にはパーキンソン病の主要症候のうちわずかでも確認できるタイプをすべてそう呼称したいと思います。必須項目は1)動作緩慢~寡動(思考緩慢、歩行緩慢を含む) 2)歯車様筋固縮 3)姿勢異常・姿勢反射障害 4)安静時振戦とし、追加項目として1)自律神経症状(起立性低血圧、便秘、排尿障害、体温調節障害など) 2)レム睡眠行動異常とします。これらの所見がみられないものはすべて除外します。つまり私案では「パーキンソン病らしさ」があるかないかを重視し、「幻視」「認知の変動」という主観的で判断の曖昧な臨床診断を混乱させる項目は除外します。
「パーキンソン型認知症」に共通してみられ問題になる症候として「日中の嗜眠・傾眠」があります。先日、同じ日の外来にこの「パーキンソン型認知症」で継続診療している症例が4~5例集まりました。そのうち3例が前回処方したアマンタジン50mg(朝食後)が著明に効果を示しました。以前から他のどんな薬剤を使用しても効果がなかった「日中の嗜眠・傾眠」という症状に対してです。わずか50mgで劇的に効いたのは大変驚きでした。特に毎回外来受診時にいつも嗜眠状態であった60代の症例が初めて外来受診時に嗜眠状態がなかったのです。このたびアマンタジンを使用した症例は元々幻視の訴えがないかあっても軽度の症例が多かったと思われます。アマンタジンは副作用として幻覚が出やすいというのは神経系専門の人間であれば誰もが知っているほど有名な事ですので、DLBにはこれまで一切使用が推奨されて来なかったように思われます。しかしアマンタジンという薬剤は「パーキンソン病」「パーキンソン症候群」に適応があり、実際はパーキンソン病の症例においても古くはレボドパの次に選択される薬剤という位置付けでした。パーキンソン病に対してドパミンアゴニストなど次々と新薬が出たために、ここ最近の10~15年くらいはいつしかアマンタジンを使わなくなったという傾向がありましたが、少量でもこれだけの効果があるのであれば見直されるべきだと思います。個人的にはChE-Iよりも価値の高い薬剤治療だと考えます。


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by shinyokohama-fc | 2016-01-18 19:00 | 治療
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