薬害だらけの医療現場

新年早々で久しぶりのブログ更新ですが、おめでたくない話題で恐縮です。以下は私の知人(病院勤務Dr・神経内科)から先日受信したメールの一部引用です。
「本日から仕事初めでしたが、救急患者はゾルピデム(短時間型睡眠導入薬)飲みすぎて意識障害の高齢男性、フル二トラゼパム(長時間型睡眠導入薬)、レべチラセタム+ガバペンチン(抗てんかん薬)と神経系薬剤を多剤併用されて転倒して腰椎圧迫骨折した高齢男性、チクロピジン(抗血小板薬)を内服していて腸腰筋血腫をおこした高齢男性などなどいきなり薬害患者のオンパレードでした(苦笑)」
もともと私の診療科である「神経内科」は薬害患者が放り込まれやすい傾向にあります。薬害患者の原因薬剤が処方されるのは大半が「精神科」です。「うつ病」で精神科にかかっていて、抗精神薬を多剤併用されている患者から、手が震えるとか歩きにくいので診てほしいというケースが非常に多すぎてこちらは辟易します。
病院勤務時代も今でも一番印象に残っているのは精神科で処方されたハロペリドールやクロルプロマジンなどの抗精神薬で「悪性症候群」を起こした数々の重症症例です。抗精神薬を処方された方すべてがこのような重篤な有害事象を起こすわけではありませんが、人というのは個体差・個別差があり、1000人に1人はこのようなケースがあるわけです。特に代謝能力が低下した高齢者では抗精神薬や睡眠導入薬などの神経系薬剤を多剤併用あるいは高用量で投与された場合は高い確率で重篤な副作用(意識障害やせん妄など)を起こしえます。
一番の問題は薬を処方する医者側が薬の副作用(危険性)を十分に理解していない事です。特に神経系に作用する薬剤というのはやむを得ず、恐る恐る処方する薬です。患者側もそういう意識で薬を飲むべきです。そういう薬が数種類に増えれば脳の中で何が起こるか誰にも予測できないのです。
昨日NHKのドクターGという番組で「スルピリド(抗精神薬)による薬剤性パーキンソン症候群」のケースが取り上げられていました。一般の方が視聴する番組としてはかなりマニアックだと思いましたが、私が20年以上神経内科の外来をやっていて最も多かったのはこのケースでした。古くから胃薬としても使われていて特に精神科においてはよく頻用されている薬です。「食欲がない」という症状には特に効果があるようです。しかしこの薬を長期間内服を続けることによって、「手が震える、動作が鈍くなった、歩けなくなった」という事で神経内科の外来を訪れるケースが非常に多かったのです。スルピリドを中止しても元のように歩けるまで数か月~半年かかった症例もありました。高齢者でなくても「薬剤性パーキンソン症候群」が出やすい薬であることは間違いないようです。
最近よく診るケースとしては高齢者の側頭葉てんかんの症例に対してカルバマゼピン(抗てんかん薬)が処方されて、ふらついて歩けなくなったという症例です。100~200mgという少量でもそういう症状が出るようです。この薬はそれだけ「小脳性運動失調」を起こしやすい薬だという事です。長期内服により「薬剤性小脳変性症」を起こすことも知られており、若年時から20~30年の間内服を続けていた結果、60歳で高度の小脳萎縮、起立歩行が不可能になった症例も最近診て非常に驚きました。昨年から単独使用が可能になった新規抗てんかん剤にはこのような有害事象はないようです。
薬害は日常の臨床現場に溢れています。医療者(医者や薬剤師)の勉強不足・管理責任が欠如していると言わざるをえない現状です。神経系の薬剤は症例を選んで上手に使えば非常に有用であることは間違いないのですが、使い方がまずいために有害事象が放置されているケースがあまりにも多すぎて嘆息させられます。こういう現状を踏まえて将来的には神経系薬剤の副作用に関する啓蒙活動などを考えています。


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by shinyokohama-fc | 2016-01-08 09:25 | 治療
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