幻覚(幻視・幻聴)は前頭側頭型認知症で高頻度に出現

臨床的診断として前頭側頭型認知症(FTD)には行動障害型認知症(bv-FTD)、意味性認知症(SD)、進行性非流暢性失語症(PNFA)があります。前2者の疾患については、発症年齢65歳以下という条件で、今年7月から大幅に拡大された医療費助成対象疾病・神経難病に、PSPやCBDと同様に国に申請できることになりました。
実際の症例ではこの行動障害、語義失語、非流暢性失語というのはオーバーラップしています。またピック複合関連疾患と位置付けられている、PSPSとCBSの4リピートタウ症候群でも行動障害、語義失語、非流暢性失語が多くみられる事がわかってきました。つまり、ピック系群の疾患は大なり小なり失語症状がみられるようです。これは前頭葉・側頭葉の障害で現れる症状ですので、前頭葉・側頭葉に病変が拡大していくATDやDLBの一部バリアントにも現れると推定されますが、実際のATDやDLBの臨床的典型例では進行例でも失語は目立たないようです。つまり失語という症状はピック系群の症候群に特徴的な症状といえると思います。初期の軽度な段階ではしばしば家人や介護者から「会話がかみ合わない」という印象がもたれるようです。失語或いは会話障害と行動障害がみられれば、それだけで臨床的・前頭側頭型認知症として間違いないでしょう。臨床的・前頭側頭型認知症(FTD)にはbv-FTD,SD,PSP,CBSが含まれます。前2者は身体症状がほとんどなく、後2者は身体症状が顕著であるという違いはありますが、行動障害、失語症という点に関しては程度の差はあれ共通しています。
これらの症候群を数多く診て、病歴を聞いて新たにわかった事がありました。初期は前頭葉本来の症状である、アパシー(自発性の減退、無関心、無気力、無為)が前面に出ることです。しばしば老年性うつ病と誤認されて、多くは精神科医にTCAなどの抗うつ剤を処方されて、脱抑制症状が悪化して興奮したり、さらにアパシーが悪化したというエピソードがよく聞かれます。また、ある時期には非常に顕著な幻覚(幻視・幻聴)症状がみられる事です。PDやDLBのようなレビー関連症候群と違うのは、前頭葉特有の脱抑制症状が加わっているためかなり激しく訴えるという点です。認知症専門医らは「高齢者が幻覚を訴えればDLBだ」という思考回路があるのかもしれません。認知症専門医がDLBだと診断した患者を私が神経内科医としての視点でみてみるとまったくDLBらしさがない。つまりDLB特有の不幸オーラ、多愁訴による疾病過剰意識、陰鬱さ、動作の緩慢さがみられず、不自然なほどに陽気で鼻歌を歌ったり、手をたたいたり、椅子を回して遊んだりしています。この脱抑制ぶりはFTDだと誰でもわかるほどでしたので、物を指して名前を言うようにと5つ物品を示して聞くのですが、一つも言えません。重度の語義失語です。臨床的にFTD-SD、意味性認知症で間違いありません。日本で有数の患者を診ているであろう認知症専門医が「幻覚=DLB」と診断した患者を私はFTD-SDと診断したわけです。
ただこれらの症例ではChEI、クエチアピンが併用されていても、まったく幻覚や脱抑制症状は抑えられていませんでした。どうやらFTDはDLBとちがってChEI+非定型抗精神薬が奏功しにくいようです。臨床的FTDに共通しているのは、ChEIの2種類で幻覚や脱抑制症状が悪化しやすいということと、抗精神薬が非常に効きにくいという事です。既存の神経系薬剤が通用しにくくコントロールに難渋するので、PSPやCBD同様に神経難病に相応しい?と言えるのではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2015-11-27 18:58 | 医療
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