PDは薬剤依存性、PDDとDLBは薬剤過敏性

PD(パーキンソン病)は薬剤依存性、DLB(レビー小体型認知症)は薬剤過敏性。特にパーキンソン治療薬に対しては。数々の症例を経験するとそういう結論に至りました。これらの疾患は同じレビー小体病、αシヌクレイン疾患とされていますが、やはり機能性・臨床像で大きな相違点があります。
PDという疾患は進行は緩徐であり、発症年齢は様々ですが通常は発症15~20年までは動作歩行障害のみの症状で、副作用を除いて高次脳機能障害や精神症状はほとんど現れません。DLBのような薬剤過敏性もみられませんので、パーキンソン治療薬や神経系薬剤の少量投与によって顕著な副作用が出現するケースはほとんどありません。ただし発症10年前後で薬効の減退によるウェアリングオフ、オンオフなどの現象が顕著になってきます。動作歩行障害の年次進行に伴って神経内科医が治療薬を多剤併用&増量でどんどん増やしていきます。多くのPD患者は薬剤過敏性はなく、ドーパミン依存性であるため一度増量した薬剤を減量することは困難です。少しでも薬剤を減量すると、動けなくなった!と大騒ぎする方も少なくないわけです。PD患者で多剤併用薬を大幅に減らすと動作歩行が極端に悪化します。なぜなら脳が薬に依存している状態だからです。しかし経過の長い症例では6~7種ものパーキンソン治療薬が処方されるため、副作用として幻覚・妄想・せん妄・嗜眠などの精神症状が避けられない状況になります。それを回避するための一つの方法として外科的治療・DBS(深部脳刺激)があります。
2か月前から72歳女性で20年以上の長期経過のPD(パーキンソン病)の症例をみています。オンオフ現象もはっきりした症例であり、50歳前後からの発症なので本来はDBS(深部脳刺激療法)の適応ではなかったのではないかと思われましたが、前医(神経内科医)からは何故かまったくその話がなかったそうです。PDという疾患は病気の経過進行にしたがって治療薬がどんどん増えてしまう傾向があり、これらの治療薬はすべて神経系に作用するものですので、高齢化とともに多剤併用になるため、薬害リスクが高まるというデメリットが避けられないという問題があります。DBSを導入すれば、治療薬はドーパミンアゴニスト単剤(カベルゴリンなど)にすることが可能になります。この方は6~7種類ものパーキンソン治療薬が盛り付けられていました。レボドパ・カルビドパは600mg/日。前医にて副作用中和目的にドンペリドン(リスぺリドンの親戚薬、日本の治療ガイドラインで推奨されているが、フランスでは危険薬物指定)が処方されて案の定、流延と誤嚥が悪化したため介護者の判断で中止されていました。それ以外にもロピニロール徐放剤とロチゴチン貼付剤(同じドーパミンアゴニスト)が併用されていて、それ以外にもなぜかコリンエステラーゼ阻害薬(内服薬)、COMT阻害剤、ゾニサミド(元々抗てんかん剤)が処方されていました。その結果として嗜眠状態、せん妄状態となっていて、すくみと姿勢反射障害が顕著で介助でもほとんど歩けず、強制把握反応や開眼失行など著しい前頭葉兆候がみられていたため、初診時はPSPSと間違えたほどでした。私は治療薬による有害事象の要素が非常に大きいと考えて、レボドパ減量、ロピニロール中止、ChEI中止、ゾニサミド中止を指示しました。
その後は早朝起床時の覚醒が良くなり、嗜眠は大幅に軽減してしたものの、両足の疼痛が出現したため、ゾニサミドのみ再開とし、最近発売されたリン脂質系のサプリメントを推奨しました。次の診察では動作が良くなっただけではなく、強制把握反応と開眼失行が大幅に軽減していたことです。前頭葉兆候がここまで軽減したケースはこれまで記憶がなかったので驚かされました。過剰な多剤併用を少しでも軽減できるという希望が持てました。私の経験でいうとChEIなどの神経系薬剤の一部は前頭葉症状を悪化させることは間違いないようです。今回紹介した症例はやはり典型的なPDで間違いないのですが、経過が長すぎるため、大脳基底核・黒質・淡蒼球の長期の伝達障害のため、二次的に前頭葉障害が起こっていると推察されました。明らかに多剤併用による精神症状にもかかわらず、幻覚などの症状だけを判断して、DLBだと診断??されたのか患者会に入会していたようです。
典型的なDLBはすべての神経系薬剤に対して薬剤過敏性です。そのため多剤併用には忍容性がなく、ほとんどの症例でChEI、パーキンソン治療薬で副作用が出現しやすいようです。特にパーキンソン治療薬の多剤併用は重篤な副作用を誘発します。意識障害、失神、起立性低血圧、嗜眠状態などを誘発したり、幻覚・妄想などで錯乱状態に至るケースも多いです。DLBのパーキンソン症状の多くは軽度であることがわかったので、最近はあえてパーキンソン治療薬を処方することを避けています。一方で高齢でPD症状が先行して発症して4~5年以内に幻覚などの精神症状や高次脳機能障害をきたすPDDという病型があります。PDDの場合は脳幹障害と前頭葉障害が顕著な症例が多く、臨床像としてはPSPSに類似したものになります。誤嚥性肺炎や転倒などの合併症もDLBよりは非常に多く予後不良のようです。DLBもPDDも一部にChEIが全く通用しないケースがあり、むしろChEI投与により精神症状が増悪したり、動作歩行が悪化したりするケースが存在します。これらが前頭葉にタウが高度蓄積する(前頭葉が高度変性・萎縮する)タイプの悪性DLB/PDDです。ChEI反応性のDLB/PDDと比べると同じ疾患とは思えないほど経過が進行性で悪性のため現存する薬物治療はほとんど無力に近いという印象です。こういうケースの場合はがんと同じく緩和ケア中心の医療を検討したほうがいいのではないかと思います。
いずれにして薬剤反応も含めてあまりにも臨床症状に差異が大きいのが事実です。てんかんの大発作と精神運動発作くらいの違いがあります。ちなみにてんかんという疾患においては病理変化はありません。片頭痛や群発頭痛も同様です。これらの機能性に分類される症候群においては病理診断ではなく、臨床症状と薬物反応のみで評価されます。
PDやDLBという疾患というよりも症候群はそういう性質が強いのではないか?臨床現場においては変性疾患というよりも機能性疾患という意識で考えたほうがいいと個人的には思います。


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by shinyokohama-fc | 2015-10-15 11:38 | 治療
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