大脳皮質基底核症候群(CBS)の主要症候(2)行動抑制障害

タウイメージングPET検査において大脳皮質基底核変性症候群(CBS)ではタウが基底核と白質の限局的領域に蓄積するという報告がありました。PSPSでタウが前頭葉~側頭葉、中脳被蓋~脳幹、小脳に至るまで広範囲に蓄積するのと対照的でした。前頭葉障害型DLB(アミロイド蓄積型)でも前頭葉~側頭葉に広範囲にタウが蓄積するそうです。
CBSはPSPSに比べて非常に進行が緩く、症状が弱いという印象はこのタウPET検査からも理解できると思います。
CBSがPSPSと大きな違いは前頭葉障害がそれほど強くないことです。症候学について書かれた成書によるとCBSにおいてはPSPSでみられる「多幸」「脱抑制(行動抑制障害)」がみられないとされています。
しかし、PSPSに比べても極めて稀と認識されていたCBSの臨床像を呈する症例を75歳~85歳の高齢女性で比較的よくみかけるようになりました。そしてこれらの症例に共通しているのは、「多幸」「脱抑制」がほぼ全例でみられる事です。抑うつ的・神経症的な印象は皆無で、動作歩行障害がかなり顕著にもかかわらず、病識がまったくないため、しばしばその面で介護者のイライラ感を誘発しやすいようです。
高齢者CBSでは従来から言われている、常同行動、環境依存、失語症に加えて、利用行動(使用行動)、易刺激性、脱抑制行動などが前面に現れる症例が多いようです。これらの高齢者CBSを診察しますと、片側上肢運動拙劣症・上肢の左右差はそれほど顕著ではないが、上肢を目的をもって使用することは困難です。しかし多くの症例では車椅子に座っている高齢女性が突如として診察室の机の上のマウスやボールペンを触りだします。何の悪げもなく触る様子はまるで小さい幼児のようです。いわゆる利用行動(使用行動)という症状ですが、諸説あるがやはり被影響性の亢進、行動抑制障害(脱抑制)の一部と捉えるとわかりやすいと思います。前頭葉障害が画像診断ではさほどでもないのに、こうした症状が顕著に現れるのはなぜなのか?と症例をみながら考えました。行動抑制系の神経回路として「前頭葉-基底核-視床回路というのがあります。この回路が大脳基底核病変のみで伝達障害をおこすと言われています。その影響で二次的に前頭前野機能低下を起こして情動的精神症状や認知症類似症状を引き起こすと言われています。高齢者ではもともと加齢に伴う前頭前野の機能低下があるので若年者よりもこのような症状が出現しやすいのではないかと推定できます。つまりCBSの前頭葉症状の多くは二次的な症状ではないかと考えます。
パーキンソン病の外科治療として確立されている、深部脳刺激(DBS)ですが、主としてこの回路に含まれる視床・淡蒼球に作用する治療です。刺激ポイントが少しでもズレると症例によっては行動抑制障害がみられる事もあると言われます。この線条体・淡蒼球・視床という複雑なターミナルステーションのような部分の病変・障害はデリケートなものですので、神経系の薬剤の与で過敏反応や有害事象を起こす場合も少なくないのでしょうか。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-10-06 12:49 | 医療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line