ChEI貼付剤(認知症治療薬)の超高齢者における副作用

最近、90歳前後の長寿高齢者の増加に伴い、女性の平均寿命(87歳)を超える年齢でコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)の貼付剤の少量投与(4.5~9mg)で嗜眠傾向が出現する症例が続出していることに気がつきました。いずれも中断してみると嗜眠はすみやかに改善するそうです。80歳までの症例ではまずなかった副作用です。NMDA受容体阻害剤ではなくChEIで出現したことに驚きだったわけで、最初は半信半疑だったのですが、デイケアからの情報では他に同じ貼付剤を使用して嗜眠になっている超高齢者が複数いるとの事でした。貼付剤の導入は内服薬だと消化器症状が強いのでという理由でした。たしかに内服薬に比べると9mg~13.5mgまで他の同種薬剤に比較して副作用が少ないという印象でした。
常識的に考えて88歳以上の患者は治験の対象にはなりません。平均寿命を超えた年齢なので、他の何らかの疾患(がんや肺炎など)で死亡する可能性が高いからです。治験は純粋なアルツハイマー、つまり60~70歳の患者に行われたものですので、本来はこの薬(貼付剤)が90歳前後の患者に使用されるという事はまったく想定されていないのだと思われます。そもそも90歳前後の患者にChEIの使用がどの程度意義があるのでしょうか?冠動脈攣縮や心室性不整脈などのリスクを考慮しても超高齢者に対してはChEIの使用は慎重になるべきだと思うからです。しかし一方で前医にてChEIが処方されていたケースではよほどの有害事象がないかぎり、中止しにくいのも事実です。それは「ChEIを中止すると認知機能が極端に落ちるので中止するな」という認知症学会からの指導があるからです。
一方で年齢によってChEIの用量調整、あるいは使用を控えろという指導はまったくありません。日本老年医学会のストップ・スタートにも認知症治療薬4種は何故か含まれていません。私の印象では認知症治療薬は特に80歳以上の患者に対しては抗精神薬と同等に近い深刻な副作用事例が報告されているのが事実です。その多くが前頭側頭型タイプの疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、意味性認知症、行動障害型認知症など)のようです。しかし90歳前後の超高齢者がChEIの使用で日中嗜眠状態で食事をとれば、誤嚥や窒息のリスクになることは高齢者医療の観点からいうと明白ですので、私はこの副作用の情報があった場合は、ChEIを即座に中止するように指示しています。
個人的な印象でいいますと85歳以上の認知症?の方には治療薬の使用は難しい。それは認知症治療薬が抗精神薬・抗うつ薬、パーキンソン治療薬などと同じく劇薬系だからです。劇薬は人によっては毒物に変わりますので要注意です。薬の有害事象で高齢者が誤嚥性肺炎に至る原因はベンゾジアゼピン系か抗精神薬だと言われてきましたし、実際わが国で繁用されているBZ系の抗不安薬では特に喀痰喀出能力を低下させて誤嚥の頻度が多くなり、最悪肺炎に至るという経験が数多くありました。しかし今後はChEIの貼付剤も要注意薬剤リストに入れるべきでしょう。


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by shinyokohama-fc | 2015-10-05 17:23 | 治療
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