CBS(大脳皮質基底核変性症候群)の主要症候(1)一側上肢の運動拙劣

大脳皮質基底核症候群(CBS)と思われる症例を開院以来15例ほど診療してきましたが、最もわかりやすい片側上肢の顕著な運動拙劣症候が確認できるのは6例にとどまっています。顕著な片側上肢の運動拙劣~不使用のほとんどが「右手」ではなく「左手」です。今回はこれについて考察したいと思います。
おそらくCBSには右大脳優位機能低下タイプと左大脳優位機能低下タイプがあるはずで、その比率に関しては成書には記載されていません。左手の運動拙劣症状が現れる症例は右大脳優位機能低下例です。程度の差はあれ多くは左半側空間無視と非流暢性失語を伴っています。右大脳脳卒中で左半側空間無視の場合、失語は伴わないのと異なります。もともと大半の人は右利きであり、左手に比べて右手を使う機会は圧倒的に多くなります。私も1~2例だけ右手拙劣タイプを診ていますが、このタイプに関してはかなり進行しないとわかりにくいという事です。少なくとも右利きで右手を生来から頻用する方は右手の運動拙劣が表面化しにくいのではないか?それに対して左手の場合は普段使わないので、軽度の巧緻運動障害が起こると益々右手に頼る傾向が強まり、次第に使わなくなるので廃用化が早いのではないかと思われます。手の運動拙劣という症状はパーキンソン病の主要症状としても有名ですが、
パーキンソン病は発症年齢や個人の資質に差異はあるものの、重度の廃用化に至るまでは15~20年かかる傾向があります。それに対してCBS右優位タイプの場合は4~5年以内にほぼ片側上肢の完全拘縮・廃用化に至る事が多いようです。しかしこの「運動拙劣」という症状は一般の臨床医に理解されにくい症状でしばしば「運動麻痺」と誤解される事が非常に多いようです。存在しない脳梗塞による左片麻痺と診断されてしまうようです。たしかに左上肢を屈曲したまま歩行するので、一見重度の左上肢の運動麻痺に見えるのですが、私の手を左手に近つけると猛烈な力で握り返してきて驚かされることがあります。これは前頭葉症候群の本態性把握反応ですが、中等度以上のCBS症例にはかなりの確率で顕著な把握反応がみられます。手で触れたものを反射的につかんでしまうのです。また普段は全く動かさないにもかかわらず、何らかの外的刺激や状況反応によって突如動かないはずの上肢が無目的に動くという事もよくあります。つまり「運動拙劣」という症状は「自分の意志どおりに上肢をうまく動かせない(命令動作を含む)」と言い換えることもできます。「運動麻痺」の場合は麻痺肢にいかなる刺激を与えても重度麻痺の場合はまったく動きません。こういう症状は大脳基底核特有の症状で、基底核が障害されると起こります。CBSとPD以外で比較的多いのは脳血管性パーキンソニズムと呼ばれる病態であり、基底核に微小梗塞あるいは血流障害が起こることによるものです。最近は脳血管性パーキンソニズムの症例を診ることはCBS以上に稀になりました。
「運動麻痺」という症状は主として「錐体路」の障害で起こり、「運動拙劣」という症状は「基底核」の障害で起こります。高齢者医療に携わる医療者、看護・介護・リハビリの専門職にはそのことをまず知ってほしいと思います。


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by shinyokohama-fc | 2015-09-25 09:18 | 医療
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