長寿化・高齢者増加に伴う神経変性疾患の増加

敬老の日に発表された統計では、現在日本では65歳以上の人口が3384万人、80歳以上の人口が1002万人もいるという事です。ここ数年で後期高齢者(75歳以上)で何らかの神経変性疾患が発症するケースが激増したという印象ですが、それは母数の増加にもあるのでしょうが、感染症治療や心疾患・がんなどの予防が国民レベルに浸透したという医療的にはポジティブに捉えるべき成果の裏返しなのでしょう。
日常診療していて驚かされるのは80歳以上で発症する老年認知症(DLB、AGD(グレイン)、NFT-SDなど)が非常に多数を占める一方で、PSPSやCBSと思われる症例も比較的よく見られます。20年前に私が神経内科の診療を始めた頃はこのような症例は60~65歳前後で発症し1~2年に1人診るかどうかという程度でしたが、75歳以上で発症するPSPSやCBSが増えているようです。もはやPSPSやCBSは以前のようなレアな神経難病ではなくなりつつあります。神経内科医以外の診療科のDrはPSPやCBSを診たことがないDrも多いと思われるため、多くはパーキンソンに似た動作歩行障害があることからDLBやPDと診断されているようです。一般的に診療したときに最初にレアでマイナーな疾患を想定せず、メジャーな疾患を想定して薬物処方するのが常識的だと思われます。DLBに対してはコリンエステラーゼ阻害薬、PDに対してはレボドパなどパーキンソン治療薬を試すのが普通ですが、それらが効果がないか、むしろ奇異反応で症状が増悪する場合は、PSPSやCBSを疑うきっかけになると思います。特に80歳以上の方では一般的に高齢に伴う薬剤代謝能力の低下・薬剤過敏性の増加によって薬剤忍容性の低下がみられます。私の場合は80~85歳のPSPS、CBSに関しては神経系にダイレクトに作用するタイプの薬剤処方は極力最小限に留めるように心がけています。このような高齢者の神経難病に対しては薬物療法よりもむしろ緩和ケアが重要です。
医者というのは薬で治そうとしますし、患者側からもそれを求められます。しかし神経難病に有効な治療薬は存在しないという現状を考えますと、生活の質(QOL)を第一に考慮すれば80歳以上の方に対してに関してはやはり介護側が中心になって、いかにして神経難病の緩和ケアを充実させていくかという事に力点を置くべきです。神経難病はいわゆる老衰とは違います。何歳で発症しても神経難病です。老衰者のように穏やかな経過とはいかないわけです。そして50~60歳の神経難病と80~90歳の神経難病は臨床像も周辺環境などがまるで違うので、やはりそれぞれの年齢相応の対応というのが求められます。現状のように60歳でも90歳でも同じ薬物治療をガイドライン?していてはうまく行くはずがなく、80歳以上では薬物治療に限界を感じる事のほうが多いですし、むしろ弊害のほうが多いように思えます。


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by shinyokohama-fc | 2015-09-23 10:33 | 医療
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