MIBG心筋シンチ検査とDLB診断の限界

ここ1~2年のキャンペーンによって、DLBという疾患への啓蒙が進む中で、症候主体の箱入れ的診断法による患者あるいは診察医によるミスリード症例をたくさん見る機会が増えたという印象です。その多くは診断基準の主要症候といわれる、1)幻覚(特に幻視) 2)認知の変動 3)パーキンソニズムの正しくない解釈によるものでしたが、ここに来て補助診断的検査の正しくない解釈症例も目にするようになりました。
MIBG心筋シンチという検査があります。心筋の自律神経を評価する目的の検査です。長年糖尿病を患っていたり動脈硬化を患っていて無症候性の心筋梗塞がありそうな症例、特に男性高齢者では当然欠損像が多くみられます。先日、MIBG心筋シンチで欠損が確認されて、認知症専門医?にDLBと診断されたという長年糖尿病を患っている80代男性の方が訪れました。この検査をオーダーした専門医?は長年糖尿病を患うとその罹患年数に比例して糖尿病性自律神経障害が起こってくるという事実を知らないのかもしれません。検査というのは必ず落とし穴があり、それゆえこういう検査はあくまで補助的な位置つけにしかならないわけです。
症候学的解釈の誤りのよくあるパターンとしては
1)幻覚(幻視)⇒薬剤誘発性(抗PD剤など)、前頭側頭型変性症候群(前頭葉起源)、側頭葉てんかん(側頭葉起源)
2)認知の変動⇒薬剤誘発性せん妄、電解質異常、側頭葉てんかん、行動障害型老年認知症の症状の曲解
3)パーキンソ二ズム⇒長期罹患パーキンソン病、薬剤誘発性EPS、PSP/CBSなどの症状の曲解
DLBという症候群をなんでもかんでも入れてしまう箱入れ的診断法(疾患群の広義化)に私が賛同できない理由というのは、非常に多種多彩でヘテロな症候群に対して、画一的な薬物処方がまるで通用しないという事実がわかったからです。薬剤過敏性による薬害を極力減らすためにはDLBという症候群に対してはできるだけ上記に挙げた除外診断を徹底することにより狭義化するべきだと個人的には感じます。そもそも主要症候の1)~3)を根拠にDLBであろうと言われてしまう症例群が本当にDLBなのか?患者を診れば診るほどわからなくなり、神経系薬剤の処方を重ねれば重ねるほど病態がどんどん修飾されすぎて迷宮入りしてわからなくなるというのが現実です。一番厄介なのはすでに4~5種の神経系薬剤の多剤処方をされていてどうしようもない状態で来られる方です。一度神経伝達物質や受容体の流れを多剤で修飾してしまうと本来の症候的な病態がまったく見えなくなるからです。例えば前医にパーキンソン治療薬を3~4種類も使用されて幻覚が出て大変だ!というDLBらしき症例をときどき見かけますが、この状態でパーキンソ二ズムの評価をしようというのが無理な話で、こういう症例の多くは診察室では明らかな筋固縮はみられず、薬が過剰、効きすぎて何らかの副作用が出ています。一般的にDLBのパーキンソニズムというのは初期~中期は基本的に軽度で、安静時振戦は目立ちません。ただしパーキンソニズム(薬剤誘発性EPS)を起こす薬がまったく入っていなければの話ですが。四肢・体幹の歯車筋固縮が顕著なDLBはまず見たことがないです。
結論をいうと、DLBの診断というのは非常に難しいです。PSPSやCBSの診断のほうがはるかに明確でブレがない。その捉え所のないヘテロな症候群をそれぞれ複数の神経系薬剤によってコントロールというのはさらに難しいです。それは個々の症例がすべて薬剤に対する反応が全例違うからです。多くの症例では想定外の副作用が続出してしまうため、どこからが主症状でどこからが副作用かがさっぱりわからないという迷路に入り込みます。どんな薬剤を試してもすべて副作用が出てしまってどうしようもないという症例も少なくないわけです。コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)が有効だとよく言われますが、実際はまったく違うのです。おそらく本当に有効といえる症例は3~4割程度しかないのではないか?ChEIが著効してHAPPYという報告ばかり見聞すると、「そんなに簡単に良くなるのか?」という希望を生みますが、その希望はものの見事に打ち砕かれます。3~4割は初期量でごく少量のChEIに対してすら顕著な薬剤性過敏性を示すわけで、神経系薬剤に対して絶望的に忍容性がない症例があまりにも多いのです。一昨年ChEIが無効で予後不良なDLB症例が存在すると発表していた貴重な学会講演がありました。その多くは前頭葉機能障害が顕著な症例でアパシーが強い症例のようです。ああやはりそうなのかと納得させられました。薬物治療の難しさと限界を思い知らされたわけです。


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by shinyokohama-fc | 2015-09-08 11:04 | 医療
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