「物忘れ」ではなく「覚える気がない」人たち

認知症の診療を希望して来られる方の多くは80~90歳女性が多いようです。同居あるいは介護している家族は「すぐに物事を忘れる」と訴えますが、簡易知能スケールを実施すると27~29点もあります。5つの物品再生などはほぼ正答であり、時計描画テストも正確に描けるようです。ただし描くスピードが異常に早く雑に描く傾向にあります。
これらの方々の多くは日常生活動作はほぼ自立しており、介護者の手を煩わせる事はないようです。これらの症例に共通しているのは本来記憶力が保持されているにもかかわらず、普段の生活では記憶することを放棄していると推定されます。つまり「考え無精」ならぬ「覚え無精」ではないかと思います。
一般的に典型的な認知症の方は時計描画テストで苦労します。アルツハイマー型(ATD)の方は数字がまともに入れられない事が多く、レビー小体型(DLB)の方は思考遅延傾向のため、数字や針を描くのに異常に時間がかかります。つまり時計描画テストをすれば、きわめて特徴的でほとんど典型的な認知症に関しては抽出できると思われます。簡易知能スケール(MMSEなど)の点数というのはATDの方々の重症度をある程度評価できると思いますが、DLBや前頭側頭型認知症(FTD)タイプの認知症については、診察時は初期~中期までは高得点である事が多い半面、家庭における行動心理症状が顕著な症例が多いようです。例えば「用もないのに肉親に何度も電話をする」とか「自室が片つけられず捨てられない物が溢れている」とか様々です。ATDの尺度でいうと27~29点で認知症という判定にはならず
比較的顕著な行動心理症状出現するというのは説明できません。80歳以上の高齢者に多いと言われている「嗜銀顆粒性認知症(AGD・グレイン)」が最近の学会でもよくクローズアップされるようになりました。これはアミロイドが蓄積せずにタウ蛋白が脳細胞内に蓄積する病気の一つです。一般的には75歳以上で発症するが、記憶・見当識などいわゆる中核症状と呼ばれる症状に関しては緩徐進行性のため、日常生活動作の自立期間も長期間になります。その一方で情動障害に伴う行動心理症状が出現しやすく、焦燥、不機嫌、易怒、易刺激性などで現れてしばしば家族を困らせるようです。AGDの場合多くは中核症状が顕著になってくるのは進行して数年後になると言われます。一般的に60~70歳で発症するATDが中核症状の進行が非常に速く、日常生活動作において1対1介護を必要とするのとは対称的です。AGDは左右差のある前頭葉~側頭葉外側の萎縮が画像診断的には特徴ですが、初期にはそういう所見はみられません。またATDと違って海馬の萎縮もみられない事が多いようです。またDLBと混合症状をきたす場合も少なくないようです。80~90歳の女性人口が非常に多い事を考えるとAGDに対する薬物治療の確立が求められています。
私の印象では少量のガランタミンが比較的相性がいいようです。それはこの薬剤の特性によるものだと思われます。
しかし高齢者の場合は心不全・心臓弁膜症・不整脈などが潜在している事もあり、高用量には耐えられない症例が多いと考えられます。詳しくは以前のブログ(ガランタミンvsリスぺリドン)を参照してください。


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by shinyokohama-fc | 2015-07-07 18:55 | 医療
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