側頭葉てんかん(TEA)の症例の雑感

80代前半の方で、2年前から幻視・幻聴があり、認知の変動がある、情緒不安定で、突然人格が変わる、思い通りにならないと易怒性、言葉や物の名前が出てこないという症状の方がおられました。前医で1年前と2か月前にMRI検査を施行されてますが、側脳室周辺に軽度の虚血性変化があるのみで、大脳・脳幹・小脳ともに病的萎縮はみられませんでした。脳波では側頭葉棘波がみられ再現性があるようです。診察してみても、動作歩行の緩慢さや思考遅延、振戦はまったくみられず、歯車現象・筋固縮はなくむしろ筋トーヌス低下していました。血圧の起立性変動も測定しましたが、起立性低血圧は全くみられませんでした。神経内科医としてはパーキンソニズムもなく、起立性低血圧もない症例をレビー小体型認知症(DLB)とは考えられません。前医(精神科)の診断も「側頭葉てんかん(TEA)」でした。問診だけの操作的診断でDLBとTEAを鑑別するのは不可能だと思いました。特にパーキンソニズムや起立性低血圧がみられない症例に関してはMIBG心筋シンチ・ドパミントランスポーターイメージング(ダットスキャン)などの検査によりDLBを除外診断したい所ですが、これらの検査は高額で拘束時間が長く、患者側の忍容性問題がありますので代謝能力の低下した80歳以上の高齢者に実施するのはやや酷な気がします。それより簡便に実施できる脳波検査でてんかん波がみられれば、TEAと診断するのは当然だと思います。前医ではカルバマゼピン(CAZ)を100~200mgで1年経過をみられていましたが、有効用量に届かなかったのか、残念ながら明確な効果は得られなかったようです。CAZは長期投与により小脳変性をおこすという事は成書に記載されています。この症例も軽度~中等度の小脳性運動失調症が確認されたため、CAZを中止せざるをえないと判断しました。画像診断で明らかな小脳萎縮は確認できないため、薬剤性(CAZ)が疑われます。高齢者の場合は微量のCAZでも忍容性に問題を起こします。やはり高齢者のTEAに対しては新規抗てんかん薬のラモトリギン(LTG)かレべチラセタム(LVE)を使用するしかないのではと考えますが、LVEに関しては「易刺激性・攻撃性・精神症状の変化に注意」とありますので、やはり現実的にはTEAには使いつらく、結局LTGを選択するしかないと思われます。LTGは双極性障害にも適応のある薬剤ですので、本例のような情緒不安定な症例には奏功するのではないかと期待したい所です。この薬は神経系の副作用がほとんどみられないので、皮膚粘膜眼症候群・重症薬疹の副作用さえなければと思います。

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by shinyokohama-fc | 2015-06-30 19:17 | 医療
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