前頭側頭葉変性症(意味性認知症・行動障害型前頭側頭型認知症)が7月から難病対象に

当院は昨年11月26日付けで神奈川県より神経内科の難病指定医として「指定医指定通知書」を受けています。
本日、厚労省健康局疾病対策課から「平成27年7月1日から、難病の方へ向けた 難病医療費助成制度の対象疾病が拡大します」というお知らせをいただきました。このたび既存の110疾病に加えて196疾病が追加されて306疾病に拡大されます。今回新たに追加された神経疾病には「前頭側頭葉変性症」が新たに含まれていました。
「(行動異常型)前頭側頭型認知症(bv-FTD)」「意味性認知症(SD)」の2つが対象のようで、「進行性非流暢性失語(PNFA)」と「運動ニューロン疾患を有する前頭側頭型認知症(FTD-MND)」は含まれていないようです。臨床調査票に示された、bv-FTDとSDの各診断基準を以下に示しますので、ご参考願います。
<(行動異常型)前頭側頭型認知症>
1)必須項目
進行性の異常行動や認知機能障害を認め、それらにより日常生活が阻害されている
2)次のA-Fのうち3項目以上をみたす
A. 脱抑制行動;以下の3つの症状のうちいずれか1つ以上をみたす
1) 社会的に不適切な行動 2) 礼儀やマナーの欠如 3)衝動的で無分別や無頓着な行動
B. 無関心(アパシー)または無気力
1) アパシー(動機、意欲、興味の消失) 2)無気力(行動開始の減少)
C. 共感や感情移入の欠如;以下のうち2つの症状のうちのいずれか1つ以上を満たす
1) 他者の要求や感情に対する反応欠如 2) 社会的な興味や他者との交流、または人間的な温かさの低下や喪失
D. 固執・常同性;以下の3つの症状のうちいずれか1つ以上を満たす
1) 単純動作の反復 2) 強迫的(常同的)または儀式的な行動 3) 常同言語
E. 口唇傾向と食習慣の変化;以下の3つの症状のうちいずれか1つ以上を満たす
1) 食事嗜好の変化 2) 過食、飲酒、喫煙行動の増加 3) 口唇的探究または異食症
F. 神経心理学的検査において、記憶や視空間認知能力は比較的保持されているにも関わらず、遂行機能障害がみられる
3) 発症年齢が65歳以下である
4) 画像検査所見 : 前頭葉や側頭葉前部にMRI/CTでの萎縮か、PET/SPECTで代謝や血流の低下がみられる
※脳血管障害が原因と考えられるものは除く
※画像読影レポートまたはそれと同内容の文書の写し(判読医の氏名の記載されたもの)を添付する
5) 以下の疾病を鑑別し、全て除外できる
①アルツハイマー病 ②レビー小体型認知症 ③血管性認知症 ④進行性核上性麻痺 ⑤大脳皮質基底核変性症⑥ 統合失調症・うつ病などの精神疾患⑦発達障害
6)臨床診断 ; 1)~5)の全てをみたす
(重症度分類に関する事項)
⓪ 社会的に適切な行動を行える
①態度・共感・行為の適切さに最低限だが明らかな変化
②行動・態度・共感・好意の適切さにおいて、軽度ではあるが明らかな変化
③対人相互関係がすべて一方向性である高度の障害
<意味性認知症>
1)必須項目
次の2つの中核症状の両者を満たし、それらにより日常生活が阻害されている
A. 物品呼称の障害 B. 単語理解の障害
2) 以下の4つのうち少なくとも3つを認める
A. 対象物に対する知識の障害(特に低頻度/低親密性のもので顕著)
B. 表層性失読・失書
C. 復唱は保たれる。流暢性の発語を呈する
D. 発話(文法や自発語)は保たれる
3) 発症年齢が65歳以下である
4) 画像検査所見 :側頭葉前部にMRI/CTでの限局性萎縮がみられる(脳血管障害が原因と考えられるものは除く)
※画像読影レポートまたはそれと同内容の写し(判読医の氏名の記載されたもの)を添付する
5) 以下の疾病を鑑別し、全て除外できる
①アルツハイマー病 ②レビー小体型認知症 ③血管性認知症 ④進行性核上性麻痺 ⑤大脳皮質基底核変性症 ⑥うつ病などの精神疾患
6) 臨床診断: 1)~5)の全てを満たす
(重症度分類に関する事項)
⓪ 正常発語・正常理解
① 最低限だが明らかな喚語障害。通常会話では理解は正常
② しばしば生じる発語を大きく阻害するほどではない程度の軽度の喚語障害・軽度の理解障害
③ コミュニケーションを阻害する中等度の喚語障害、通常会話における中等度の理解障害
④ 高度の喚語障害、言語表出障害、理解障害により実質的にコミュニケーションが不能
FTLD(bv-FTD/SD)の上記診断基準に関しては実際の臨床現場の感覚から言うと、きわめて難しい問題点・課題が以下1)~3)のようにありそうです。
1) 発症年齢を65歳で区切っている事
いつから疾病が発症したかというのは、神経変性疾患の場合は極めて特定が難しく、正確には不明です。何故なら家族・職場など周囲の人間の客観的評価に依存する所が大きいからです。わずかな仕事や生活上の異変をも的確に把握する能力にも差異があり、また家族の客観的情報が真実かどうかを確認する事は指定医側からは不可能です。
65歳からと申告すれば難病で、66歳からと申告すれば難病ではない、その差は何なのか?という疑問があります。
実際は65歳以上で発症したであろう典型的な臨床像のbv-FTDも少なからずみられます。
2) 混合型の臨床像には診断基準は対応していない
bv-FTDやSDの臨床像としては動作歩行障害を伴わないという事ですが、特に50歳前後という早期発症例では発症7~10年でパーキンソニズム、視空間認知障害などが混在してきます。これらの臨床像としてはPSPやCBDと鑑別が困難な事例も少なくないという印象です。またPSPやCBDと思われる症例の中にもbv-FTD的な要素の強い(上記診断基準にもおおよそ合致している)臨床像のケースも私が1年間で診ただけでも5~6例は存在しました。
3) 画像診断を重視しすぎている(画像読影医のレポート添付を義務つけている)
画像診断において、前頭葉・側頭葉に萎縮変化がみられるのは、初期からではなく2~3年以後であり、個人差が大きいです。また多くの症例がこの時期になると行動障害の病状が悪化して検査拒否・安静不能の状況に陥ります。鎮静剤を使ってでも検査しろとでも言うのでしょうか?そこまで画像検査診断に価値があるとは思えないのです。実際前頭葉型ATD、前頭葉型DLBのような臨床像のケースもありますし、検査を実施することによって益々診断が迷走するというケースがむしろ多い気がします。どこから病的萎縮と判断するのか?は判読医による読影スキル・経験・価値観の差異が問題になります。そのような事で運命が左右されるなどあってはならないことです。
病気の診断というのが(患者家族や医師など)人間の主観的印象に左右されてしまうのは、ある程度仕方のないこととはいえ現実問題として、bv-FTDの典型例にまで、コリンエステラーゼ阻害薬が使用されて、行動障害を悪化させているというケースが後を絶たないようです。これは家族情報を担当医が共存できていない事の証左と言えます。この「前頭側頭葉変性症」という疾患群の方々がどれだけ正確に診断されて、難病医療費助成制度の恩恵に預れるのか、今後注目していきたいと思います。


新横浜フォレストクリニック
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by shinyokohama-fc | 2015-06-09 19:21 | 医療
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