ドーパミン補充・賦活薬が起こす前頭葉症候群の悪化

パーキンソン病の治療薬はドーパミン補充療法を含めてすべてドーパミン賦活作用があります。パーキンソン病について記載している教科書には以下のような治療薬によって引き起こされる諸問題が記載されています。パーキンソン病の治療薬に関する知識が乏しい医者がたくさんいて、この事を全く認識しておらず、動作歩行障害がある患者には誰でも彼でも「とにかくパーキンソン治療薬を処方しておけばいい」と考えている医者があまりにも多いようです。パーキンソン治療薬によって起こる以下の諸問題は、主としてパーキンソン病を長年罹患してるがために、比較的若年時から治療薬を長期(5~15年)に内服した事によって起こるといわれていましたが、最近は若年性FTD,PSPS,CBS,など前頭葉型DLBなどいわゆる前頭葉症候群のグループのフロンタル・パーキンソニズムと思われる動作歩行障害に対してもパーキンソン治療薬が使われることにより、薬剤誘発性に脱抑制や常同行動などの前頭葉症状が悪化している症例が散見されるようです。
1)衝動制御障害 (Impulse Control Disorder)
衝動や欲望を抑えられずに、本人または他人に危険な行動をしてしまう現象。病的賭博、病的買い物、病的摂食、病的性欲亢進などが主として挙げられるが、DSM-Ⅳには窃盗、放火などの犯罪的行動異常も挙げられている。ドーパミン受容体刺激薬の使用が契機になりやすい。
2)ドーパミン調節異常症候群 (Dopamine Dysregulation Syndrome)
レボドパやドーパミン受容体刺激薬を必要以上に欲しがる傾向があり、薬によってドーパミン特有の快感が得られる。報酬系を司どるmesolimbic systemの過剰興奮と推定されている。レボドパの使用が誘因になる傾向にある。
3)Puding
複雑で常同的な行動である。細かいものを集めたり整理したり、引き出しの中のものを入れたり出したり、歩き回ったり(周遊)、これらの常同的行動が強迫的でやめられない状態になり、周囲が無理に止めようとすると激怒したり、暴れたりする傾向にある。必要以上のドーパミン補充療法が衝動性を亢進すると言われている。
これら1)~3)の諸問題は、一般的にパーキンソン病においては若年発症で、性格傾向のある、治療薬内服期間が長期にわたる症例が多いと言われています。
個人的な見解を言うと、純粋なPD(パーキンソン病)にはレボドパやドーパミン受容体刺激剤などの治療薬は生活水準・QOLを向上するためにある程度は必要だと思います。ただし必要以上の高用量・多剤併用などの過剰な治療薬の使用には反対です。特に70歳以上の高齢者の場合はむしろ投薬を過剰にすると逆に動作歩行レベルが悪化する症例のほうが多いという印象です。パーキンソン治療薬を減らしたら動作レベルが劇的に改善したというケースはPDDやDLBのような薬剤過敏性傾向の症例に多くみられるようです。PD・DLBの動作歩行障害には薬を増やすよりも積極的なリハビリテーションの介入が有効なのは言うまでもありません。私が診ている症例でも80歳前後で積極的にリハビリ・運動療法を実践した結果として、明らかに1年前より動作レベルが向上した症例があります。
若年性FTDでは後期にパーキンソニズムが出現しやすいというのは前回のブログで書いたとおりですが、この場合のパーキンソニズムは前頭葉起源のものですので、当然パーキンソン病のそれとは性質がまるで違います。若年性FTDはDLB以上に薬剤過敏性の症例が多いという印象です。それはCHE-I、抗精神薬、パーキンソン治療薬など神経系薬剤すべてにおいてです。おそらく病気の進行がきわめて速いために、正常な神経細胞が少なくなり、薬剤の作用すべき受容体が正常に機能しなくなっていると推察されます。
50歳で発症した若年性FTDと思われる症例で、発症7~8年目でパーキンソニズムが出現してきたのですが、前医では精神症状の変動とパーキンソニズムと核医学検査の所見からDLBと診断されて、CHE-Iに加えてレボドパ300mgが処方されていました。来院すると、たしかに前傾姿勢ではあるのですが、動作は機敏でパーキンソンらしさは微塵もなく、とにかく座らず、院内を周遊してあちこちの物を触りまくる(使用行動)という状態でした。自宅では易怒・興奮性、脱抑制が顕著という事でした。当然のごとくレボドパとCHE-Iの大幅な減量を提案しました。それで易怒・興奮性は軽減したようです。前頭葉障害が末期状態で重度アパシーで活動性が著しく低下していた状態にCHE-Iとレボドパを投入した事により、易怒・興奮・多動とアパシー・無動を目まぐるしく繰り返しているという奇妙な状態に陥っていたようです。これは断じてDLBの認知の変動などではなくて、薬害そのものです。いわゆるピックコンプレックスと呼ばれる前頭葉系のCBSやPSPSという疾患でもここまで極端ではないにせよ、薬剤により前頭葉症候が悪化するという似たような状況を数多く経験しました。
あくまで個人的な見解ですが、レボドパやドーパミンアゴニストのようなパーキンソン治療薬は「パーキンソン病」にはある程度適した薬ですが、それ以外のFTD,CBS,PSPS,DLB(前頭葉障害優位型)など複雑化した症候群に対してはICD,DDS,Pudingのような不都合な結果を招いているケースが多いので、使用を控えるべきだと思います。


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by shinyokohama-fc | 2015-06-02 19:07 | 治療
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