ガランタミン vs リスぺリドン・臨床試験

神経内科医の知人から以下の論文を教えてもらいました。要旨(サマリー)のみ以下に紹介します。

「Galantamine Versus Risperidone Treatment of neuropsychiatric Symptoms in Patients with Probable Dementia : An Open Randomized Trial /Yvone Freund-Levi,M.D. et al/Karolinska University Hospital, Stockholm Sweden/Am J Geriatr Psychiatry 22:4, April 2014」
「認知症の神経心理症候に対するガランタミン vs リスぺリドン治療/オープン無作為化臨床試験」
目的)
認知症の認知機能と神経心理症候(NPSD)に対してガランタミンとリスぺリドンの治療効果
方法)
診療所外来で無作為化臨床試験。100名の認知症とNPSDをもつ成人を対象にした。参加者のうち50名にガランタミン8~24mg/日を12週間。50名にリスぺリドン0.5~1.5mg/日を12週間投与。一次的尺度、NPSDに対する効果はNPIにより評価。二次的尺度としてMMSE,CDR,CGI,SASなどで評価。すべての試験は治療前後に実施された。
結果)
結果が受動解析を使って解析され、91%(年齢79±7.5歳、67%女性、NPI 51.0±25.8 MMSE20.1±4.6)が試験を完了した。ガランタミン・リスぺリドンの両者ともNPSDを改善したという結果で、いくつかのNPI項目では同等の効果があった。しかしリスペリドンは重要な項目(易怒・興奮)で優位性を示していた。ガランタミン治療はMMSEで認知機能を基準値より2.8アップさせた。重篤な副作用は確認されなかった。
結論)
これらの結果はガランタミンはNPSDの最初の治療として安全面の点からも推奨される。易怒・興奮に関してはリスペリドンが優れていた。
・NPSD各項目の軽減スコア (G;ガランタミン R;リスペリドン)
①妄想 (G-61/R-67) ②幻覚(G-97/R-83) ③興奮(G-54/R-93) ④うつ(G-60/R-64) ⑤不安(G-76/R-64)⑥多幸(G-57/R-67) ⑦無気力(G-44/R-39) ⑧脱抑制 (G-66/R-86) ⑦易怒(G-40/R-78) ⑧異常行動(G-59/R-85)⑨夜間行動(G-84/R-79) ⑩ 食欲(G-70/R-53)
有意差があった項目は ③興奮・焦燥 ⑦易怒 のみ
・副作用
①心血管障害(G-6/R-10) ②消化器症状(G-7/R-7) ③筋症状(G-2/R-7) ④泌尿器症状(G-6/R-5) ⑤代謝栄養症状(G-2/R-5) ⑥呼吸器症状(G-1/R-0) ⑦皮膚症状(G-1/R-3) ⑧全身症状(G-2/R-0)
全体 G-37/R-45 ※心血管障害・筋症状がRで有意に多い

ガランタミンはこの3~4年で200~300例くらい使用してきたと思いますが、副作用で脱落した症例はごくわずかでした。おそらく自験例での脱落症例は肝硬変が1例、遅発性統合失調症疑いが3例くらいでしょうか?この薬で易怒・興奮が誘発される場合は多くはメマンチンとの併用です。どちらか単独にすれば全例治まったようです。ガランタミンもメマンチンもそれぞれ単独で使えばそれほど副作用は多くないというのが率直な印象です。よく言われる消化器症状の副作用例はゼロで、制吐剤を併用する事は全くありませんでした。私の場合はガランタミンを最初に使用する場合は他の神経系薬剤と併用する事が稀だからだと思います。たぶん追加で何か使用するにしてもラメルテオンくらいだと思います。そしてこの薬を使用後に行動/神経心理症候が悪化してきて抗精神薬を追加せざるをえないというケースも稀で、現在は1例のみです。この薬はアセチルコリン、ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニン、GABAなど複数の神経伝達物質に作用すると言われていますので、極端な神経系の副作用がでないのかもしれません。高齢者に薬剤で特定の神経伝達物質を極端に賦活しすぎると必ずと言っていいほど副作用が出現します。この薬は複数の神経伝達物質をうまく調整するという特徴があるので、私としては認知機能を落とさないという目的よりもむしろ行動/神経心理症候(BPSD/NPSD)を制御する目的で使う事が多いように思います。ATDだけでなくbv-FTD(行動障害型・前頭側頭葉型認知症) などの一部症例にも効果があると言われているのは理解できます。
リスぺリドンに関してはドパミン阻害作用が強すぎるのか、高齢者に対しては時に顕著な錐体外路症状(パーキンソニズム)と心不全・不整脈を誘発しやすいという印象があります。自験例で85歳女性で多動がひどい認知症症例を精神科に紹介してリスペリドン2mgが処方され全身がガチガチになってしまった事があります。易怒・興奮には効果があるのでしょうが、連日投与で1~2か月継続するという使い方はあまりにもリスクが高すぎます。過去10年で認知症のBPSD(特に易怒・興奮症状)に対してこの薬が高齢者に対して頻繁に使用されてきた結果として、転倒・骨折・フレイル・パーキンソニズムが数えきれないほど誘発されて寝たきりに至ったケースも少なくないと思われます。本来は「認知症」に対しては適応外使用ですから、リスクについて十分な説明がなされた上で頓用で使用されるべきです。「認知症に抗精神薬は危険」というイメージを作った原因の多くはこの薬の強い副作用にあると思います。
私は以上の自験例を経験した4年前から、この薬を処方する事は一切なくなりました。易怒・興奮症状に対してはチアプリドが効果のある症例が比較的多いという印象です。リスペリドンのような強い副作用もなく、錐体外路症状の副作用も抗精神薬に比べると軽度で全身がガチガチになることはまずなくて減量調整で対応可能のようです。
一般的に神経系の薬剤は非常に使い方が難しく、症例によって薬剤の至適用量や副作用の閾値はまったく異なりますし、薬剤が複数になるとさらにその解釈が複雑化します。症例の特徴を把握してよく考えて使う必要があります。


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by shinyokohama-fc | 2015-05-25 19:00 | 治療
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