パーキンソニズムとは何か?

神経学的な精緻診察なき乱雑な外来診療では「高齢者の歩行障害=パーキンソン病、パーキンソニズム」という安易な評価・診断がされがちです。患者が多く十分な診察時間がとれない状態では致し方ない場合もあります。
まず高齢者では脊椎疾患による脊髄障害による歩行障害を除外しなければなりません。特に女性の場合は骨そしょう症による脊椎変形や圧迫骨折が少なくないので要注意です。長期の脊髄圧迫は下肢運動障害の原因になりえます。
また高齢者では加齢に伴いドパミンが低下傾向になるので、動作が遅くなり、震えやすくなる傾向にあります。
まず注意すべきなのはドパミン阻害剤です。嘔気止めのドンぺリドンやメトクロプラミド、抗精神薬のスルピリドやチアプリドはたとえ少量でも高齢者女性では薬剤性パーキンソニズムをきたします。
パーキンソニズムを語る場合、まず本家の「パーキンソン病(PD)」を知る必要があります。PDの最大の特徴は左右差と初期の片側性です。初期~中期は必ず右か左かのいずれかにしか症状はありません。ベッドに横たわった状態、安静時の片手のリズミックな振戦(ふるえ)、丸薬手位という独特の手の姿勢があります。有名な歯車様筋固縮も同側にみられます。手関節と肘関節で一様な歯車的抵抗を確認できます。それに対して反対側にはそれらの所見はほとんどありません。次に姿勢は前傾姿勢、姿勢反射障害は前後に軽く押して踏ん張りにくい状態です。ただし姿勢反射障害の診察で明らかに自ら率先して倒れようとする場合があり、この場合は演技性・心因性という判定になります。発症年齢にもよりますが、発症して2~3年経つと動作が緩慢(遅く)になり、思考も緩慢で遅くなる傾向があります。PDの多くは神経質で慎重なので、中期まではほとんど転倒して大怪我することは稀です。高齢発症のPDの場合は動作歩行障害の進行が速く、発症後数年で幻視・妄想・認知機能低下が出現するタイプもあります。いわゆるPDDです。PDの一部がPDDに移行するようですが、高齢発症でもPDDに移行しないタイプもあるようです。
次に最近話題の「レビー小体型認知症(DLB)」ですが、一般的には上記のPDでみられるパーキンソニズムの軽度レベルのものが多く、やはり歯車様固縮ですが左右差はPDほど顕著ではないようです。DLBの中には前頭葉~側頭葉障害が強いタイプ、いわゆるフロンタルDLBがあります。この場合はフロンタルパーキンソニズムやアタキシアが混在してくるので、PSPSやMSAとの臨床的な区別が難しくなります。その一方で40~60歳と比較的若年発症に多い、妄想型DLBというのが存在します。統合失調症との鑑別が問題になるため、DATスキャンが診断に有用です。パーキンソニズムがほとんどみられないグループのためほとんどが精神科を受診しますので、神経内科の外来で診ることはまずありません。
パーキンソン関連疾患と呼ばれている疾患群ですが、見た目がPDと似ているだけで本質はまるで違います。
大脳皮質基底核症候群(CBS)は顕著な左右差が特徴的です。初期は一側の上肢のみ鉛管様固縮がみられます。やがて同側の運動拙劣が顕著となってきて、不使用という症状になります。しばしば運動麻痺と誤解されています。典型的なCBSは軽度のフロンタルアタキシアの開脚性失調歩行は存在するものの歩行は中期までは比較的安定しています。ただし視空間失認が顕著なため、一見安定しているように見えるわりには怪我が多いようです。
進行性核上性麻痺症候群(PSPS)は様々な病型があります。古典型のRichardson Syndromeは1~2年で急速に進行して歩行不可能になるタイプで、中脳被蓋が顕著に非薄化します。脳幹障害も非常に強いために、高度の嚥下障害に伴い喀痰貯留・呼吸障害などをきたしやすく、早々に胃瘻や気管切開を余儀なくされることが多いようです。
最近外来でよく見るPSPSはRSタイプに比べて進行の遅いタイプばかりです。しかし初期から姿勢反射障害が強く転倒するのが特徴です。またすくみ現象とフロンタルアタキシアの開脚性失調歩行が必ず全例にみられます。
PSP-Pというパーキンソン病にきわめて類似したタイプがあります。初期の臨床像はPDと似ていると言われますが、最大の違いは上肢に筋固縮が軽度~正常で左右差がないことです。頸部~体幹~下肢は筋固縮が目立ちます。
PSP-PAGF、純粋無動症(PA)タイプは前回ブログに記載したとおりで、四肢の筋固縮はほとんどなくむしろ筋トーヌスが低下しているためにしばしばMSAと誤認されます。体が固くないのにすくみや突進現象がみられます。PSPSの最大の特徴は前頭葉~後方連合野への抑制障害による被影響性の亢進と環境依存により動作歩行状態が大きく変化することです。ここが中脳黒質に限局性のPDとの違いです。
MSA(多系統萎縮症)の代表的なものはMSA-C(OPCA)です。上肢は小脳運動失調の影響で筋トーヌスが低下しますが、下肢は固縮ではなく痙縮となり、伸展位から屈曲するときのみ強い抵抗があります。Babinski反射や足のクローヌス(間代)という所見もみられます。MSA-P(SND)の場合は早期から四肢・体幹ともに高度の筋固縮があり、2~3年で全身がガチガチになります。あらゆる薬剤に抵抗性で、動作歩行レベルが著しく阻害されます。
NPH(正常圧水頭症)ではフロンタルアタキシアとパーキンソニズムが軽度~中等度みられます。初期はPSPSと非常に類似しているので、画像診断による確認が必須になります。画像診断でNPHでなければ多くはPSPSです。
このように代表的な疾患において「パーキンソニズム」を検証していくと一筋縄ではいかないというのがお分かりだと思います。やはりカギは「フロンタル・パーキンソニズム」と「フロンタル・アタキシア」の評価になります。
詳細は以前のブログをもう一度参照してください。


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by shinyokohama-fc | 2015-04-07 19:23 | 医療
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