中脳障害をきたす疾患(PSP症候群とDLB症候群)

中脳というのはあらゆる場所とつながり、複数の路線が乗り入れているバスターミナルのようなものかもしれません。中脳~脳幹を主座とするPSP症候群やDLB症候群において多彩な症状をきたす理由はここにあるのでしょう。
中脳連絡系に関連する症候を以下にまとめてみます。
1)中脳ーマイネルト核 ⇒意識障害、嗜眠、記憶障害 ;アセチルコリン欠乏
2)黒質ー線条体系⇒パーキンソ二ズム(動作緩慢、歩行拙劣など) ; ドパミン欠乏
3)中脳ー大脳辺縁系⇒幻覚・妄想・興奮 ; ドパミン亢進
4)中脳ー大脳皮質系⇒せん妄・症状の動揺性
例えば、3)の症状によくリスぺリドンという薬剤が使用されます。一方で制吐剤としてドンぺリドンもそれに類似した薬剤でやはり中脳に作用します。どちらの薬剤も効果が非常に高いため臨床現場で頻用される傾向にある反面、誤って作用してしまうと1)2)のような症状をきたしてしまうリスクがあります。事実としてリスぺリドンを高齢者に使用したり、ドンぺリドンを小児に使用したりすることによって、ドパミンが阻害されるだけではなく、脳幹網様体が誤作動して意識障害に陥ったりするケースが時々報告されています。フランスでは座薬の販売中止が勧告されているほどです。
中脳障害により神経伝達のバランスが崩れている、PSP症候群とDLB症候群ではアセチルコリンとドパミンの拮抗バランスも微妙に崩れていると推定されます。PSP症候群の中には上記1)~4)の症候すべてが出現・消退をくりかえす症例が存在するという事を最近知りました。この症例にはレボドパ、ドパミンアゴニスト、コリンエステラーゼ阻害剤、漢方薬(抑肝散、真武湯)など様々な薬剤が試されましたが、いずれも一時的に効果があっても持続しなかったり副作用で忍容できなかったりでした。中でもレボドパ少量で強烈な嗜眠をきたす状況でした。保険医療ではもはや限界と判断したケースです。PSPSとDLBSは程度の差はあれど1)~4)の症候をきたしうるようです。実に様々な症状が現れるため、あらゆる神経系薬剤が使用されがちですが、それらの薬剤によってさらにバランスを崩してしまうケースが後を絶たないようです。それだけ中脳障害系の疾患のコントロールは一筋縄ではいかず、まさに難関と言えるでしょう。
PSPSで特徴的な中脳被蓋の高度萎縮所見は進行の速いPSP-RS(Richardson syudrome)では確実にみられますが、比較的高齢で発症するPSP-PやPSP-PAGF,PSP-CBDなどでは顕著ではありません。また眼球運動障害も発症して数年以後に顕性化してくる症例がほとんどのようです。中脳萎縮が画像的に軽度だからといって、中脳障害が存在しないわけではなくて、程度の差こそあれ、1)~4)の症候は存在すると考えたほうがいいでしょう。
PSPSとDLBSの最大の違いは自律神経障害と言われます。自律神経障害に著効する薬剤は残念ながら存在しないようです。PSPSでは頻尿や便秘などの仙骨部~腰部にある副交感神経関連の症状に限定されますが、DLBSではしばしば高度の心血管系自律神経障害による30mmHg以上の高度の起立性低血圧や徐脈、体温調節や発汗障害などをきたします。起立性低血圧の有無の確認は両者の鑑別の参考になるでしょう。
最近保険適用となったDATスキャンによるドパミントランスポーターイメージング検査では両者の鑑別は困難ですがMIBG心筋シンチグラムでは鑑別が可能と言われます。ただしこの検査とて糖尿病や心筋疾患による他の要素を除外できるものではなく、検査というのはあくまで参考程度にしたほうがいいようです。
参照ブログ) 「老年科医の独り言」http://ameblo.jp/lewybody/


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by shinyokohama-fc | 2015-04-06 19:17 | 医療
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