すくみ足と歩行失行

久しぶりに実家の本棚を探してみると、15年以上前に学会認定医試験勉強の目的で購入した古医学書を見つけました。あまり読まないであろう古医学書はほとんど捨てたのですが、先端医学社の「KEY WORD1998-99 神経変性疾患」というのがまだありました。100人以上もの神経内科の専門家の共著でしたが、何年かぶりに読んでみると、近年の医学書にはみられない結構有意義な事がいろいろ書かれていて、久しぶりに読んでいて感銘を受けました。画像診断が進歩してない時代のほうが、臨床症候の評価を精密に考察しているので、実地医科としては参考になります。
今回はその中から48ページの「すくみ足と歩行失行」を取り上げます。(以下引用)
すくみ足(frozen gait)とは、歩行を開始する際にまたはその途中において、足が床から離れず、前に進むことができない状態を意味する。視覚的または聴覚的刺激で改善する(paradoxical kinesia)ことがある。(中略) 床反力計ですくみ足を調べ、多発性脳梗塞では歩隔(左右の足の幅)がパーキンソン病に比べ有意に広かった。少歩の連続線上にあると考えられ、パーキンソン病と多発性脳梗塞とのすくみ足の発症機序は神経学的に異質なものと推定した。いまだに十分解明されていないが、リズム構成障害に関連するとされ、責任病巣は黒質ー大脳基底核ー前頭葉が関与していると考えられる。
歩行失行(apraxia of gait)とは、下肢の運動麻痺や感覚障害がないにもかかわらず、歩行に際して正しく下肢を動かす能力の低下または欠如と定義されている。もともと歩行失行は前頭葉失調(1892年、Brunsら)からGerstmannとSchilderが分離して独立した概念としたもので、長らく議論の対象になった。現在までに報告された症例を表にまとめた。歩行失行と考えた症例の歩行の特徴は歩き出そうとしてもなかなか第一歩が出ず、ようやく歩き出してもすぐに止まってしまい、再び同じ事を繰り返した。paradoxical kinesiaはみられなかった。歩行失行の責任病巣は過去の報告例からも前頭葉と考えられるが、補足運動野の関与も推定される。
歩行失行のおもな報告例の原疾患;脳腫瘍(前頭葉)、脳梗塞(前頭葉)、前大脳動脈動脈硬化、神経梅毒、ピック病
当クリニックでは10か月で約20例ほどの進行性核上性麻痺とその亜型と思われる症例群を診察してきましたが、パーキンソン病のすくみ足とは違って、歩隔が広い開脚性歩行であり、症例によっては体幹を揺らしながら、左右に足をぎこちなく運んで歩く症例が目立ちました。歩行開始時に床から足が離れないという感じであり、歩行が拙劣という表現が適切だと思います。病巣は両側前頭葉の内側と推定されていて、正常圧水頭症でも同様の歩行がみられます。今後は進行性核上性麻痺症候群(PSPS)のすくみ足と歩行失行の特徴について分析して考察してみたいと考えています。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-03-23 18:30 | 医療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line