CBSはなぜPD,DLB,ATDと誤認されるのか?

CBS(大脳皮質基底核症候群)という名前が一般化した背景としては、臨床診断と病理診断が合致しないからです。
臨床的CBSの病理診断はCBDが50%でPSPが30%残りはAD,FTD-Pick,Prion病などと言われています。CBDとPSPで事実上80%です。一般的にCBDとPSPというのは兄弟のような疾患と認識されます。この2つに共通している最大のポイントは既存の薬物治療が非常に困難であるという点です。
CBS-PSPのほうがCBS-CBDよりも姿勢が不安定で体幹保持障害と動作歩行障害が強いという印象です。CBS-ADは早期から認知症、注意障害、失語が目立ち、CBS-FTDは早期から異常行動が目立つようです。
<<CBSと他の疾患群の臨床症状の比較>>
<初期>
1)片手が使いにくい(片側巧緻運動障害)→運動麻痺ではなく「上手く使えない」という症状です。
2)物を触ってもわかりにくい(立体的感覚障害)
3)片方にある物を見落とす(半側空間無視)
4)道具の使い方がわからない(観念運動失行)
5)細かい筋肉の震え(反射性ミオクローヌス)
1)~5)はCBS-CBDにきわめて特徴的と言われている症状で、CBSの50%では初期からみられるはずです。しかし言い方を変えれば残りの50%では1)~5)ははっきりしないという事です。
注意しなければならないのは5)の症状であり、感覚的刺激(触覚・視覚・聴覚など)により反射性に誘発される局所(特に上肢に多い)の震えです。上肢が震えると言えば、パーキンソン病が有名なので、片手の震え=パーキンソンという単純公式による誤認がされやすいようです。事実私も含めた神経内科医もほとんど誤認しているようです。
PDの安静時振戦というのは何も刺激しなくても震えますが、反射性ミオクローヌスの場合は反応性に震えます。
6)物事を考えるのに時間がかかる(思考遅延)→PSPの記述を参照、皮質下性認知症全般の特徴
7)記憶障害・注意障害→初発症状がこれだとほぼADと誤認されます。2年以内に何らかの神経動作障害がみられるので、そこで臨床診断を修正する必要があります。
※ADと誤認されるので、漫然とCHE-Iが処方されますが、ADと違い認知症が短期的に進行するのが特徴で、CHE-Iの副作用によりむしろ常同行動などの前頭葉症状が増強されやすい傾向にあります。
8)異常行動→初発症状がこれだとFTDと認識されます。2年以内に何らかの神経動作障害がみられるので、そこで臨床診断を修正する必要があります。
※異常行動に対して抗精神薬(主としてリスぺリドン)が処方されますが、多くは過鎮静になりやすいようです。
<中期>
1)片手が無目的に動く(他人の手徴候)
2)手で触れたものを反射的につかむ(把握反応)
3)言葉が出にくい、自発的会話が少ない(失語)
4)体の左右がアンバランス・捻転(体幹傾斜・体幹ジストニア)
5)左右いずれかの上下肢に不自然に力が入る(四肢ジストニア)
1)5)はCBSに特有の症状と言われていますが、実際の評価が難しいようです。
2)~4)はPSP症候群でも共通してみられる症状ですが、4)に関してはかなり特徴的なので注意が必要です。
2)~4)はPD・DLBでは一般的にみられない事が多いと思いますので、必ず確認する必要があります。
<後期・終末期>
1)完全失語 2)嚥下困難~不可 3)体幹ジストニア~姿勢保持不能 4)起立歩行不可
特に体幹ジストニアはCBS-PSPで顕著にでやすいという印象です。CBS-CBDでは失行・失認・失語などの高次脳機能障害が主として進行しますが、動作歩行能力に関しては比較的保たれる傾向があるようです。早期から姿勢保持やジストニアが悪化して動作歩行能力が困難になるのはCBS-PSPだと推定されます。
前回のブログで記載した、PSPの行動心理症状・皮質下認知症はCBSでも同様にみられます。ただし症例によって差異が大きいようです。
実際の対症療法としてはミオクローヌスに対して抗てんかん剤を、四肢・体幹ジストニアには抗コリン剤を、四肢・体幹のつっぱり感に対しては抗痙縮剤を処方しますが、やはり副作用が出現しやすい傾向にあります。レボドパやCHE-Iも同様であり、薬を足せば足すほど病状が複雑化してわかり辛くなります。つまりどこまでが原疾患の症状で、どこからが薬剤の副作用なのかがわからなくなるという事です。


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by shinyokohama-fc | 2015-02-07 17:50 | 医療
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