レビー症候群の診断的治療ステップ

レビー小体病(DLB)の診断基準の中核症状3つを併せ持つ症候群の治療的診断の私案を以下にまとめました。
大脳皮質基底核変性症(CBD)が正確な診断が不可能だという事で、CBSという呼ばれたように、PSPもDLBもMSAも神経変性疾患すべてにおいて疾患名ではなく症候群という名称が適切だと思います。なぜそれが必要かというと、本来死後の病理診断でしか診断できないはずの疾患を問診・診察・検査など総合臨床診断で正確に診断しよう(病理診断で正解になろう)というのは到底不可能だという事実を日常的に見ている実際の症例を通して嫌というほど思い知らされてきたからです。そういうわけで実地臨床ではすべて症候群で分類するべきだというのが以下の私案です。
<DLBの中核症状①~③の評価の問題点>
①認知の変動 ②具体的で詳細な再現性のある幻視 ③特発性パーキンソニズムについて
①認知(意識状態)は変動するので、簡易スケールによる評価も正確に病状を示すものではない。何らかの原因(感染症や薬物など)によるせん妄状態やてんかん(複雑部分発作など)との鑑別も実は容易ではない。
※てんかんの鑑別には可能であれば脳波検査が望ましいが、必ずしも異常波を検出できるとは限らず、安静が守れず検査自体が困難な症例も少なくない。
②幻視は患者自身の主観的な訴えなので、当然訴えない場合もありうる。患者が異常行動を起こさないかぎり周囲からわかりにくく客観的な評価が難しい。
※レビー小体病以外でも幻視が出現する事が少なくない。最近最も多くみられるのはPSP症候群である。
③特発性パーキンソニズム(振戦、筋固縮、姿勢反射障害、動作緩慢)
特発性であると特定するのがまず難しい。多くの症例ではすでに神経系の投薬が多剤併用されていて病態が修飾されているので、現実的には薬剤を除外して確認するのがまず困難である。MRIで多発性脳梗塞、正常圧水頭症の特徴が示されても、それだけで特発性でないとは断定できない。
この3つのうち1つあればPossible,2つあればProbableということで、広い範囲の認知症・パーキンソン関連疾患がDLBという事になってしまい、すべてCHE-Iを規定通り使うべき???いやそんな簡単なら誰も苦労しないです。①~③のうち2つ以上を有する症例には以下の診断的治療を一応一通り施して様子をみるのが一般的だと考えます。
①~③の薬剤を一度にではなく順次処方して症状の変化をみます。
①CHE-I;ドネぺジル少量(3mg)又はリバスチグミン少量(4.5mg)
症状が顕著に改善⇒DLB-2
症状が不変/徐脈など自律神経の副作用出現⇒DLB-1
症状が悪化(興奮・不穏など)⇒PSP/CBD
②レボドパ/カルビドパ(L/C)50mg×3
症状が顕著に改善⇒DLB-2
症状が不変⇒DLB-1またはPSP/CBD
症状が悪化(嗜眠・幻覚悪化など)⇒PSP/CBD
③ドパミンアゴニスト(DA)
;ロピニロールCR少量2mg又はロチゴチン少量(2.25~4.5mg)
症状が改善⇒DLB-2
症状が悪化(嗜眠、幻覚悪化など)⇒DLB-1又はPSP/CBD
私はPSP/CBDの症候群を20~30例ほど継続して診ていますが、①~③のどれもが薬剤投与により症状を何らかの形で悪化させてしまう、あるいは効果が全く感じられない症例がほとんどのようです。同じような症例を50例程度診てくると、診察室に入った瞬間に「この方にはCHE-IもL/Cもたぶん通用しないな」というくらいはわかるはずです。すでに初診までにあらゆる薬剤が試されていてダメだったという、もはや薬剤治療では打つ手なしという症例少なくないです。DLB-1とPSPの鑑別はおそらく専門医でも難しいです。両者に共通している特徴として以下の3つが挙げられますが、たぶん精神科診療と同じように、診る医者によって差異が大きく出るのは間違いないでしょう。
①初期からの姿勢反射障害(PSPの方がより顕著である)
②初期からの認知機能障害(簡易知能評価スケールで中等度レベル)
③初期からの核上性麻痺(DLB-1では必須ではないが時々みられる)
最も確実な鑑別項目としては自律神経障害の有無になります。おそらくDLB-1にはみられ、PSPにはみられません。
MIBG心筋シンチは両者の鑑別にある程度有効ではあるものの、10~20%で偽陰性がみられます。成書には「FTDにおいても時にパーキンソニズムがみられる」と書いてましたが、これがフロンタルパーキンソニズム(既出)を指すのか、PSPをFTDと解釈されているのかは不明ですが、まさに鑑別診断としてはジャングル状態です。
昨年のタウ・アミロイドβPETによる脳内異常タウ蛋白の神経障害への関与を証明した画期的な学会発表においては
DLBには2つのタイプがあり、アミロイドβ陽性でPSPと同程度に前頭葉~側頭葉にタウの高度蓄積が確認されたDLB-1は、前頭葉~側頭葉の脳萎縮があり、CHE-Iの効果が乏しい事が臨床的に確認されたそうです。一方でアミロイドβ陰性でタウ蓄積もみられないDLB-2は、前頭葉~側頭葉の脳萎縮もなく、CHE-Iが効果を示すようです。つまりDLBの中核症状を3つとも有しているのに本来有効とされている薬剤(CHE-IやL/Cなど)が全く通用しないという症例が数多く存在するというのもこの学説により十分納得できますし、PSPと同様に早期から前頭葉~側頭葉が高度に障害されてくるので投薬により精神症状が悪化したりという奇異反応がみられたり、前頭葉機能障害による諸症状(常同行動、脱抑制、被影響性の亢進・環境依存、自発性低下など)が目立つというのも納得できます。経験的に言うと前頭葉機能障害が強ければ強いほど、CHE-I,L/C,DAなどの薬剤により奇異反応を起こす確率が高いようです。
前頭葉機能障害の重症度を診察室で確認する方法は主に3つです(詳細は以前のブログを参照ください)
①把握反応・強制把握 ②前頭葉性失調・歩行障害(開脚性歩行) ③抵抗症(gegenhalten)
つまりDLBの診断基準における中核症状を有する症例を診た場合は、上記3種類の薬剤を順次試す前にすべき事があるとすれば、前頭葉機能障害を①~③で臨床的に重症度判定する事と、CT/MRI検査で前頭葉~側頭葉の脳萎縮を評価する事です。治療反応性が良いというのはDLB-2の事で、DLB-1とPSPは薬剤治療が難しいというのが結論です。
それゆえ、この2つには特に新たな治療法(タウ阻害剤など)が待望されると思います。


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by shinyokohama-fc | 2015-01-09 19:10 | 医療
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