多系統萎縮症(MSA)について

多系統萎縮症(MSA)について、私自身の臨床経験を基に解説したいと思います。
MSA-C(かつてオリーブ橋小脳萎縮症・OPCAと呼ばれていた)は進行性の小脳失調をきたす脊髄小脳変性症(SCD)の1型とされていていて、あくまでSCDの亜型と考えられていました。しかし、進行性のパーキンソン症状(錐体外路症状)をきたす線条体黒質変性症(SND)や進行性の自律神経症状をきたすShy-Drager症候群(SDS)と類似した病理所見が確認されて1969年に多系統萎縮症(MSA)という包括した病名が発表されました。1998年~99年にかけてMSAの診断基準が発表され、その後難病申請の診断書もSCDやパーキンソン関連疾患とは区別されるようになりました。
多系統萎縮症というのは正確には「進行性多系統神経系機能障害」と言うほうが適切です。発症年齢は35歳~80歳と幅広く、男性が8割程度です。一般的には50歳~65歳の発症が多いという印象です。①自律神経症状 ②錐体路症状(痙縮)③錐体外路症状(固縮)④小脳失調の4つが主な症状で症例により差がありますが、最も重要な症状は自律神経症状であり、程度の差はあれどのタイプでも必発の症状だと言われています。
MRIやCTの画像診断では異常が現れないので、忙しい医療機関の外来では問診や診察が不十分でケースが正しく評価されないケースが多いです。睡眠時のいびきや無呼吸の有無を聞いたり、排尿状態を聞いたり、失神や立ちくらみの既往を聞いて、ベッドサイドで起立性低血圧の程度くらいは最低確認すべきでしょう。MSAに関しては初期から40~50mmHg程度の収縮期血圧低下は珍しくなく、中期以後になると70~80mmHgの低下、立位血圧が50~60mmHgでも失神を起こさなくなるのでかえって恐ろしいです。自律神経症状は進行性で非常に強く、薬剤治療に抵抗性ですので最も苦しめられる症状です。特に顕著なのは便秘と排尿障害であり、排尿障害は早期から導尿か尿カテーテル留置が必要になります。また体温調節障害・発汗障害による連日性のうつ熱性の発熱(37~38℃)、難治性の褥瘡、睡眠時無呼吸、喉頭喘鳴なども起こります。血圧・体温・呼吸のコントロール不能により突然死の転帰が多いと言われます。
特に自律神経症状が強いのはSDS(Shy Drager症候群)で、度重なる高度の脳血流低下を反復するため、物忘れなど認知症症状が強くなると言われています。つまり二次的な虚血性認知症が起こりやすい状況にあり、中期以後では慢性的な脳血流低下に伴い、側脳室周囲の白質変化や前頭葉~側頭葉の萎縮が目立つケースも少なくないようです。
初期~中期はMRI/CT検査で脳幹・小脳萎縮が目立たないケースも多くて、多くが見逃されています。MRIの脳幹のクロスサインや被殻外側のスリットサインも必ずしも必発ではなく、古い型のCTだと脳幹・小脳の画像診断が困難なことが多いようです。また見た目の動作・歩行障害という印象から、「パーキンソン病」と診断されて、レボドパなどのパーキンソン治療薬が処方されているが効果が今一つというケースが多いようです。しかしレボドパには強い依存性があるので一度長期投与されると効いた気になってしまうため中止できないという事が往々にしてあります。ドパミン作動薬に関しては一部の症例で有効性があると報告されていますが、いずれも適応外の使用になります。
筋肉の硬さ(トーヌス)に関しては多くの症例では上肢では正常より低下(小脳失調のため)、下肢では正常より亢進(錐体路症状のため)していて、診察では折りたたみナイフ現象や深部腱反射亢進、病的反射(Babinski反射)の確認は必須です。MSAが歩けない理由は1つではなくて、小脳性運動失調以外にも高度の低血圧による脳血流低下、下肢痙縮(筋肉のつっぱり)と固縮による関節の屈曲制限、姿勢反射障害など多岐にわたります。それゆえ比較的早期に歩行困難に至るようで、この点が小脳性運動失調以外の運動阻害因子がなく何年経過しても杖歩行で通院が可能なLCCAやSCA6とは全く違うのです。さまざまな神経所見がオーバーラップしており、この病気の診断にはベッドサイドの診察において上で述べたようないかに神経学的所見を正確にとれるかが最大のポイントになります。いずれにしても
安易にCT/MRI画像所見だけでは診断できない疾患であることを特に強調しておきたいです。
このたび難病医療費助成制度の変更により、神経難病の新規申請には都道府県の指定した「難病指定医」による診断書の記載が必須となりました。ぜひ当クリニックへご相談ください。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

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by shinyokohama-fc | 2014-10-20 12:47 | 医療
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