高齢者のせん妄とレビー小体病

今回のブログは主に医療関係者向けで、少々専門用語が多くなります。
レビー小体型認知症は最近テレビでもよく取り上げられるようになった病気ですが、認知症らしさ(記憶障害など)が目立たないケースも多いので、私はレビー小体病と呼ぶことにしています。また症例によって様々なバリエーションがあり、その臨床像は多岐にわたります。
発症年齢は50~90歳と幅広く、私の地元に限って言えば、外来通院者の8割が女性です。そしてほとんどが70歳以上の高齢者で80歳以上も多いです。
男性患者が精神症状や動作歩行障害で介護困難ですぐに病院や施設に入ってしまうケースが多いのかもしれません。施設に入所した患者でわざわざ外来通院を希望するケースは稀でよほど熱心な家族でないとそこまで考えません。多くは施設の嘱託医や訪問医に薬剤処方は委ねられます。
さて全くの初診患者で、精神症状の高齢者、特に体重30~40kgの女性高齢者が来たら、どう考えるでしょうか?
せん妄というのは急性または亜急性に発症し、幻視が出現することが多く、
入院や入所など身体的・環境的負荷が加わり、脳の機能的破綻する事です。
主症状は認知症とほぼ同じで、特徴は日内変動、意識・認知の変容で、注意欠損、思考力低下、記憶障害、見当識障害などがみられます。過活動型では
精神運動興奮で病的に能動的で過剰行動、拒否、暴力などや強い焦燥感、不安、夜間の問題行動(徘徊、大声、興奮)もあります。低活動型では精神活動停止(アパシー)で反応鈍く、意志も行動もなく、動かなくなります。うつと誤解されて家族が精神科へ連れて行き抗うつ剤が処方されてさらに悪化するというパターンが多いようです。
患者背景としては高齢者、脳卒中・頭部外傷の後遺症、視覚・聴覚障害、ポリファーマシー(治療薬のサラダ)、アルコール依存などがあります。
誘因として脱水、感染症(肺炎など)、疼痛(骨折など)があります。
薬剤として直接の原因としては、オピオイド(疼痛制御に使われる準麻薬)、
ステロイド(炎症制御に使われる)、ベンゾジアゼピン(抗不安・睡眠薬)と言われています。このほかにもヒスタミン遮断剤(アレルギーや胃潰瘍の薬)や抗インフルエンザ剤で起こりやすくなると言われています。
認知症でレビーやピックで出現する精神症状とせん妄で起こる症状はほとんど差がないと言えます。発症経過は家族や周辺からの聞き取り情報がほとんど不正確な事が多く(症状以前からあっても、家族は急に悪くなったという事がほとんど)、臨床現場・外来において認知症とせん妄の鑑別はほとんど不可能ではないかとすら感じますし、レビーやピックという病気は身体的・環境的因子による症状の変動が大きく、慢性せん妄状態と言い換えてもいいほどではないかとすら感じます。
内科的見地から見て、せん妄の原因はどのようなものがあるか考えてみると
電解質異常、特に高カルシウム血症と低ナトリウム血症です。前者は骨祖鬆症の薬や悪性腫瘍、副甲状腺機能亢進症で起こりやすく、後者は抗うつ剤(SSRI)など薬や悪性腫瘍水欠乏で起こりやすいです。その他にはアルコール依存者のビタミンB1欠乏や糖尿病患者の低血糖または高血糖、肝硬変患者の肝性脳症、慢性腎臓病患者の腎性脳症などが挙げられます。私が「代謝能力の低下した高齢者の薬剤処方を制限しましょう」という第一の理由はせん妄を誘発しやすいからです。特に30~40kgしかないやせ細った女性であればなおさらです。内科医の立場から言うと、レビー的、ピック的な症状の患者が来たらまず実施する検査は頭部画像検査(CTやMRI)よりも優先されるべきは血液検査による電解質(ナトリウム、カルシウム)、腎機能・肝機能、糖尿病、ビタミンB群の測定、そして内服薬剤の総チェックなどです。特に整形外科(ビタミンD、プレガバリン、オピオイド)、精神科(抗うつ剤・SSRI)、皮膚科(抗ヒスタミン剤・ステロイド)から処方のある患者は要注意です。
私の最近の外来では脳出血後遺症患者に整形外科からオピオイド合剤が処方されて重度の低活動性せん妄に陥った症例、器質性精神病患者に皮膚科からステロイド(内服)と抗ヒスタミン剤(胃潰瘍、アレルギー)複数が処方されて過活動せん妄に陥った症例などがありました。
目の前にある患者の症状がレビーでもピックでもせん妄でもこれらの血液検査や問診で簡単に確認できる事象は最初にスクリーニングされるべきことだと思います。
薬を処方する医者は高齢者に対する処方というのを危険性を強く認識してもう少し慎重に考える必要があるのではないでしょうか?



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by shinyokohama-fc | 2014-08-01 10:30
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